以下、厚生労働省・麻薬取締部・e-Gov法令検索の公的資料に基づく記事全文です。
「マトリ」とは、厚生労働省の地方厚生局に設置された麻薬取締部に所属する「麻薬取締官」の通称です。麻薬や覚醒剤、大麻、危険ドラッグなどの薬物犯罪を専門に捜査する国家公務員であり、医療用麻薬や向精神薬の不正流通を防ぐ監視・監督業務も担当しています。
一般的な警察官とは異なり、薬物犯罪に特化した専門的な捜査機関に所属しているのが特徴です。刑事訴訟法に基づく特別司法警察員として、一定の法律上の権限を持ち、情報収集や捜索、差押え、被疑者の逮捕・取り調べなどを行います。2026年11月現在の厚生労働省の採用情報や関係法令を踏まえ、正式名称、仕事内容、警察との違い、逮捕権、採用条件まで詳しく解説します。
【まず結論】マトリとは何者?正式名称と意味をわかりやすく解説

マトリの正式名称は「麻薬取締官」です。マトリという呼び方は、麻薬取締官の名称を短くした通称で、法律上の正式な職名ではありません。
また、「麻薬取締官」と「麻薬取締部」は同じ意味ではありません。麻薬取締官は捜査などを担当する職員の名称であり、麻薬取締部はその職員が所属する組織の名称です。
麻薬取締部は厚生労働省の専門機関麻薬取締部は、厚生労働省の地方支分部局である地方厚生局・地方厚生支局に置かれています。日本国内の薬物犯罪を専門的に取り締まる行政機関であり、警察組織に所属しているわけではありません。
主な根拠法令は、麻薬及び向精神薬取締法、覚醒剤取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律、あへん法などです。これらの法律に違反する薬物犯罪について、専門的な捜査や行政上の監督を行います。
厚生労働省の採用情報でも、麻薬取締官は国家公務員として、薬物関連法令に基づく行政・許認可事務と、特別司法警察員としての犯罪捜査を担う職種と説明されています。
マトリと麻薬取締部の違い両者の関係を簡単に整理すると、次のようになります。
- マトリ:麻薬取締官という職員の通称。
- 麻薬取締官:薬物犯罪の捜査や行政監督を行う国家公務員。
- 麻薬取締部:麻薬取締官が所属する組織。
- 厚生労働省:麻薬取締部を所管する国の行政機関。
つまり、ニュースで「マトリが捜査に着手した」と報じられた場合、一般的には厚生労働省の麻薬取締部に所属する麻薬取締官が捜査を担当しているという意味です。
【仕事内容を解説】マトリは何をする?薬物捜査だけではない4つの業務
マトリの仕事は、薬物犯罪者を逮捕することだけではありません。犯罪の情報収集から薬物の科学的鑑定、正規流通の監視、再乱用防止まで、薬物問題を幅広く扱っています。
1. 薬物犯罪の情報収集と捜査最も知られているのが、麻薬や覚醒剤、大麻、向精神薬、指定薬物などに関係する犯罪の捜査です。
麻薬取締官は、薬物犯罪に関する情報を収集し、関係者や流通状況を調査したうえで、刑事事件として立証するための証拠を集めます。
具体的には、関係者への聞き取り、犯罪に関する情報分析、捜索・差押え、被疑者の逮捕や取り調べなどが業務に含まれます。
単独の薬物所持事件だけでなく、密売組織や薬物の不正流通に関わる事件なども捜査対象です。
2. 押収した薬物の科学的鑑定薬物犯罪の立証には、押収された物質が何であるかを科学的に特定する作業が欠かせません。
麻薬取締部には捜査部門とは別に鑑定部門が設けられています。分析機器などを用いて薬物の成分を調べ、犯罪の立証に必要な鑑定を実施します。
厚生労働省の麻薬取締部公式情報によると、薬物の種類を特定する分析に加え、毛髪分析やDNA型鑑定などの専門的な手法にも取り組んでいます。
このため、マトリの仕事には現場での捜査だけでなく、化学や薬学、分析技術に関する高度な専門知識も必要です。
3. 医療用麻薬・向精神薬の不正流通防止麻薬という言葉から違法薬物だけを想像しがちですが、医療現場では治療に必要な麻薬や向精神薬も使用されています。
例えば、強い痛みを抑えるための医療用麻薬や、医療目的で処方される向精神薬などです。これらは適切に使用されれば医療上の重要な役割を果たします。
一方で、正規の製造・流通経路から薬物が横流しされたり、不正使用されたりするリスクもあります。
麻薬取締部は、病院、薬局、製薬会社などに対して立入検査や指導・監督を行い、正規の流通経路が適切に管理されているかを確認しています。
4. 国際協力・薬物乱用防止・再乱用防止薬物犯罪は国境を越えて行われることも多く、国内の捜査だけでは対応が難しい事件があります。
そのため、麻薬取締部は外国の捜査機関と情報交換や捜査協力を行い、海外から日本に流入する規制薬物への対策を進めています。
また、学校などでの薬物乱用防止教室や啓発活動にも取り組んでいます。
過去に薬物を乱用した人やその家族を対象に、面談や再乱用防止プログラムを通じて支援する活動も実施しています。
こうした取り組みから、マトリの役割は単純な取り締まりにとどまらず、薬物犯罪の予防と社会復帰支援まで広がっていることがわかります。
【警察との違いを比較】マトリ・麻薬取締員・警察官は何が違う?
マトリと警察官は、どちらも犯罪捜査に携わる職務ですが、所属組織や専門分野、指揮監督の仕組みが異なります。
加えて、名前が似ている「麻薬取締員」という職種も存在します。こちらは麻薬取締官とは別の立場で、都道府県に所属する職員です。
3つの組織・職種の違いを一覧で比較| 比較項目 | 麻薬取締官(マトリ) | 麻薬取締員 | 警察官 |
|---|---|---|---|
| 所属 | 厚生労働省 | 都道府県 | 都道府県警察など |
| 身分 | 国家公務員 | 地方公務員 | 地方公務員など |
| 任命する者 | 厚生労働大臣 | 都道府県知事 | 警察組織の法定の任命権者 |
| 主な専門分野 | 薬物犯罪・薬物行政 | 薬物犯罪・薬物行政 | 幅広い一般犯罪 |
| 捜査権限 | 法律で定められた薬物犯罪など | 法律で定められた薬物犯罪など | それぞれの司法警察権限の範囲 |
| 指揮監督 | 厚生労働大臣 | 都道府県知事 | 警察組織の指揮命令系統 |
この違いは、麻薬及び向精神薬取締法第54条から第57条などに定められています。
麻薬取締官と麻薬取締員の違い麻薬取締官は厚生労働省の職員から任命され、厚生労働大臣の指揮監督を受けます。
一方、麻薬取締員は都道府県の職員から任命されます。都道府県知事が、主たる勤務地を管轄する地方裁判所に対応する検察庁の検事正と協議したうえで任命する仕組みです。
活動区域にも違いがあります。麻薬取締官は所属する地方厚生局の管轄区域で職務を行いますが、捜査上必要な場合には管轄区域外でも活動できます。麻薬取締員は原則として所属する都道府県内で活動し、一定の条件のもとで区域外でも職務を行えます。
なお、両者は捜査上協力する関係にあり、麻薬及び向精神薬取締法第56条には、特定事件で互いに協力する仕組みも定められています。
マトリと警察官はどちらが上なのかマトリと警察官は、上下関係にあるわけではありません。所属する組織や担当する犯罪分野が異なる、それぞれ独立した捜査機関です。
警察は窃盗、詐欺、殺人、交通犯罪など幅広い犯罪を担当します。一方、マトリは薬物犯罪に関する専門知識や鑑定能力を生かして捜査します。
もちろん、警察も薬物事件を捜査します。マトリだけが薬物犯罪を取り締まれるわけではありません。
重要なのは、両者がそれぞれの専門性を生かして協力し、薬物犯罪の解明や組織的な犯罪への対策を進めている点です。
【捜査権限と逮捕権】マトリは警察と同じように逮捕できる?
マトリについて特に関心を集めるのが、警察官ではないのに逮捕や捜索ができるのかという疑問です。
結論からいえば、麻薬取締官には、担当する薬物犯罪などについて司法警察員としての捜査権限が認められており、法律上の要件を満たせば逮捕も可能です。
特別司法警察員とは何か特別司法警察員とは、特定の分野や専門的な犯罪について司法警察職員として捜査を行う職員を指す呼び方です。
一般的な警察官が幅広い犯罪を担当するのに対し、特別司法警察職員は、法律によって定められた特定分野の犯罪について捜査を担当します。
麻薬取締官は、麻薬及び向精神薬取締法第54条に基づき、同法や関連法令に違反する罪などについて刑事訴訟法上の司法警察員として職務を行います。
そのため、警察官ではないからといって、捜査権限がないわけではありません。
マトリができる主な捜査活動麻薬取締官の捜査活動には、次のようなものがあります。
- 薬物犯罪に関する情報収集・捜査
- 関係者や被疑者への事情聴取
- 法律上の要件に基づく捜索・差押え
- 被疑者の逮捕
- 被疑者の取り調べ
- 押収された薬物などの鑑定
これらは無制限に認められた権限ではありません。犯罪捜査に必要な範囲で、刑事訴訟法などの法律に従って行使されます。
マトリに逮捕権はある?麻薬取締官には逮捕権があります。
刑事訴訟法第199条では、司法警察職員が被疑者を逮捕する場合について、裁判官が発付する逮捕状に基づく通常逮捕の仕組みが定められています。
また、同法第213条では、現行犯人については逮捕状なしで逮捕できると規定されています。
したがって、麻薬取締官は薬物犯罪の捜査において、必要な法律上の条件を満たせば被疑者を逮捕できます。
ただし、逮捕するかどうかを自由に決められるわけではありません。通常逮捕では犯罪を疑う相当な理由などが必要であり、裁判官による逮捕状の発付を受ける必要があります。
捜索・差押えにも令状が必要逮捕だけでなく、捜索や差押えについても法律上の制約があります。
刑事訴訟法第218条では、捜査のために必要がある場合、裁判官が発する令状によって捜索・差押えなどを行えると定めています。
つまり、マトリは警察官と同様に司法警察員としての権限を持ちますが、その行使には刑事訴訟法上の手続きと制限が適用されます。
【麻薬取締官になるには】採用条件・資格・研修制度を解説
麻薬取締官を目指す場合、一般的な国家公務員採用ルートと薬剤師を対象とした選考採用ルートがあります。
ただし、国家公務員採用試験に合格しただけで、自動的に麻薬取締官になれるわけではありません。麻薬取締部への採用と、法律に定められた任官資格を満たすことが必要です。
採用ルートは主に2種類① 国家公務員採用一般職試験ルート
国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)に合格し、麻薬取締部の採用選考や官庁訪問を経て採用される方法です。
2026年度の募集案内では、「行政」「教養」「デジタル・電気・電子」の試験区分が対象として案内されました。採用には最終合格が必要です。
② 薬学系選考採用ルート
薬剤師免許を持つ人や、薬剤師国家試験の合格者などを対象とした選考採用です。
薬物の化学的な性質や医薬品の知識を生かせるため、薬学を専門的に学んだ人にとって有力な進路となります。
2026年度の薬学系選考採用では、1996年4月2日以降に生まれた人などの応募条件が設定されていました。薬剤師免許の取得が採用条件となることも明記されています。
麻薬取締官になるための法律上の資格要件麻薬及び向精神薬取締法施行令第10条では、麻薬取締官となるための資格要件として、次のいずれかを満たすことが定められています。
- 通算2年以上、麻薬取締りに関する事務に従事した人。
- 通算3年以上、薬事に関する行政事務に従事した人。
- 大学を卒業した人などで、通算1年以上、麻薬取締りに関する事務に従事した人。
このため、採用と麻薬取締官への任官は必ずしも同時ではありません。採用後に必要な実務経験を積み、法律上の資格要件を満たすことが大切です。
採用後の研修制度麻薬取締部では、採用後の職員に対して、経験や職位に応じた研修を実施しています。
新規採用職員研修では、捜査機関の職員として必要な知識や技術を学びます。その後も麻薬取締職員研修や任官前後の研修、係員研修、係長級研修などが用意されています。
研修では、捜査実務、行政実務、関係法令などを学び、薬物犯罪の専門家として必要な能力を身につけていきます。
マトリに向いている人の特徴麻薬取締官の仕事内容から考えると、次のような資質を持つ人が職務に適していると考えられます。
- 薬物犯罪や社会問題の解決に強い関心がある。
- 法律や薬学、化学などの専門知識を身につける意欲がある。
- 情報を冷静に分析し、証拠を丁寧に扱える。
- 関係者と協力しながら粘り強く仕事を進められる。
- 捜査に伴う緊張感や不規則な業務に対応できる。
- 全国規模の異動に対応できる。
一方、勤務地を限定したい人や、現場での緊張感を伴う仕事に強い抵抗がある人は、採用後の働き方について慎重に検討する必要があります。
【2026年最新】マトリの採用情報・募集状況・働き方
2026年11月4日現在、麻薬取締部の公式採用情報では、一般職試験ルートと薬学系選考採用ルートの2026年度募集は終了しています。
一方、2026年10月30日に更新された募集要項では、鑑定部門の課長補佐級職員を対象とする新たな選考採用が掲載されています。薬物分析の専門経験を持つ人にとって、注目すべき募集です。
2026年度の一般職・薬学系採用一般職試験ルートでは、2026年度国家公務員採用一般職試験の最終合格者などを対象に官庁訪問が実施されました。
薬学系選考採用ルートでは、薬剤師免許を有する人や薬剤師国家試験の合格者などを対象に、論文試験、適性検査、面接試験などが行われました。
薬学系選考の応募期間は2026年6月8日から6月21日まで、一次試験は7月8日から7月29日までの指定日、最終試験は8月17日から8月19日までの日程で実施されています。
2026年11月に始まる鑑定部門の専門職募集2026年10月30日更新の公式募集要項では、鑑定部門の課長補佐級職員について、次の条件で選考採用が案内されています。
- 受付期間:2026年11月5日~11月24日。
- 採用予定人数:1名程度。
- 採用予定日:原則2027年4月1日以降。
- 主な業務:乱用薬物の化学鑑定、分析・検査手法の研究開発、情報収集など。
応募資格は、薬学・理学・農学・工学などの学位と、薬品分析領域に関する実務・研究経験を組み合わせた専門職向けの条件です。
- 薬学・理学・農学・工学分野の修士号取得後、薬品分析関連業務または研究に12年以上従事。
- 同分野の博士号取得後、薬品分析関連業務または研究に9年以上従事。
- 6年制薬学部卒業後、薬品分析関連業務または研究に12年以上従事。
- 4年制薬学・理学・農学・工学分野の学士号取得後、薬品分析関連業務または研究に14年以上従事。
この募集は、一般的な新卒向けの採用とは異なり、分析・鑑定の経験を持つ専門人材を対象としたものです。応募資格や提出書類などの詳細は、募集要項で確認する必要があります。
勤務時間・転勤・働き方麻薬取締部の採用に関する公式Q&Aによると、勤務時間は原則として1日7時間45分です。ただし、日々の業務内容によって変動します。
休日は原則として土曜日・日曜日・祝日などで、休日出勤した場合には振替休日などの制度があります。年次休暇は年間20日で、4月採用者はその年の12月まで15日間です。
また、勤務地については原則として全国転勤とされています。北海道から沖縄まで全国の麻薬取締部や支所などで勤務する可能性があるため、長期的なキャリア設計では転勤への対応も考慮する必要があります。
薬物犯罪の捜査だけでなく、総務や鑑定など複数の部門があるため、配属先によって日常業務の内容も変わります。
【マトリに関するよくある質問(FAQ)】
Q1:マトリの正式名称は何ですか?
A1:正式名称は「麻薬取締官」です。マトリはその通称で、厚生労働省の麻薬取締部に所属する国家公務員を指します。
Q2:マトリは警察官なのですか?
A2:警察組織に所属する警察官ではありません。厚生労働省に所属する国家公務員です。ただし、特別司法警察員として薬物犯罪などに関する捜査権限を持っています。
Q3:マトリには逮捕権がありますか?
A3:あります。刑事訴訟法に基づく司法警察員として、法律上の要件を満たす場合には、逮捕状による通常逮捕や現行犯逮捕を行えます。
Q4:麻薬取締官と麻薬取締員は同じですか?
A4:異なります。麻薬取締官は厚生労働省に所属する国家公務員で、麻薬取締員は都道府県に所属する地方公務員です。両者とも法律で定められた薬物犯罪の捜査に携わります。
Q5:マトリになるために薬剤師免許は必要ですか?
A5:必須ではありません。国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)を経由するルートと、薬剤師免許を生かす薬学系選考採用ルートがあります。
Q6:マトリは全国転勤がありますか?
A6:あります。麻薬取締部の公式採用Q&Aでは、原則として全国転勤と案内されています。
Q7:マトリの仕事は捜査だけですか?
A7:捜査だけではありません。薬物の科学的鑑定、医療用麻薬の不正流通防止、許認可、国際協力、薬物乱用防止の啓発活動、再乱用防止支援なども担当しています。
マトリとは、厚生労働省の麻薬取締部に所属する麻薬取締官の通称です。警察官ではありませんが、特別司法警察員として法律で認められた捜査権限を持ち、薬物犯罪の情報収集、捜索、差押え、逮捕、取り調べなどを行っています。
警察との大きな違いは、所属する行政機関と専門分野です。警察が幅広い犯罪を担当するのに対し、マトリは薬物犯罪や医療用麻薬の不正流通防止などに専門的に取り組みます。また、都道府県に所属する麻薬取締員とも、任命権者や身分、活動区域が異なります。
仕事内容も、犯罪捜査だけではありません。薬物の科学的鑑定、医療機関への監督、海外捜査機関との協力、再乱用防止支援など、薬物問題の予防から事件の解明まで幅広い役割を担っています。
2026年の採用では、一般職試験と薬学系選考という従来の採用ルートに加え、11月には鑑定部門の専門経験者を対象とした課長補佐級職員の募集も予定されています。
【プロの結論】マトリを理解するうえで重要なのは、単なる「薬物を取り締まる人」というイメージにとどまらないことです。マトリは、刑事司法、薬学、科学鑑定、医療行政、国際協力という複数の領域をつなぐ専門職です。警察との違いは権限の強弱ではなく、専門分野と組織上の役割にあります。採用を目指す人は、試験の合格だけでなく、任官に必要な実務経験や研修、全国転勤を含めた働き方まで理解して進路を検討することが大切です。