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【結論】職質されやすい人に決まった服装や外見はある?

伊部 拓海 伊部 拓海 • 更新: • 公開: • 読了約 20 分
目次

職質されやすい人について、まず押さえておきたいのは、警察官職務執行法には「この服装の人」「この髪型の人」を職務質問の対象にするという規定は存在しないことです。

警察官が判断する際に重視するのは、本人の行動と、その場の状況との組み合わせです。

職務質問につながる可能性がある行動

例えば、次のような状況は警察官の注意を引くきっかけになり得ます。

- 同じ場所を何度も行き来している。
- 周囲を頻繁に確認し、特定の建物や人物を気にしている。
- 警察官を見た直後に急に進路を変える。
- 事件発生直後の現場付近にいて、目撃情報と服装などが一致している。
- 閉店後の店舗や立入禁止区域付近で、不自然な行動をしている。
- 持ち物や行動について、周囲の状況と整合しない点がある。

ただし、これらは法律に列挙された自動的な職質対象の条件ではありません。

例えば、警察官を見て進路を変えたという行動だけで、犯罪を疑う相当な理由が必ず成立するわけではありません。急いでいる、道を間違えた、警察官が苦手など、別の理由も考えられるからです。

職質されやすい服装や外見の噂を検証
外見・服装 法律上の評価
全身黒い服 服装だけでは職質の根拠にならない
パーカーやフード 着用だけで犯罪を疑う理由にはならない
キャップやサングラス 単独では職質の法的要件を満たさない
タトゥー タトゥーの有無だけで判断する根拠はない
髪型や髪色が派手 それだけで職質の対象になるわけではない
事件情報と一致する服装 具体的な事件情報などと組み合わされれば判断材料になり得る
不自然な持ち物 時間・場所・行動などとの関係で判断される

大切なのは、外見と犯罪の可能性を短絡的に結び付けないことです。

警察官が服装や持ち物を確認すること自体はあり得ますが、職務質問を適法に行うためには、警察官職務執行法第2条の要件を満たす必要があります。

【法律の根拠】警察官職務執行法第2条が定める職務質問の判断基準

職質されやすい人

職務質問の法的根拠は、1948年に制定された警察官職務執行法です。

2026年10月30日時点のe-Gov法令検索に掲載された現行条文でも、第2条が職務質問の根拠となっています。

同条第1項では、警察官が質問できる対象について、異常な挙動や周囲の事情から合理的に判断して、犯罪を犯した、または犯そうとしていると疑う相当な理由がある人などと定めています。

判断の要点は3つ

1. 異常な挙動があるか

普段と異なる行動や、不自然な言動が確認されるかどうかです。

ただし、単に落ち着きがない、目を合わせない、緊張しているといった理由だけで、直ちに犯罪の疑いが成立するわけではありません。

2. 周囲の事情と整合しているか

時間帯、場所、周辺で発生した事件、警察官が事前に把握している情報なども判断材料になります。

例えば、近隣で発生した窃盗事件の目撃情報と、現場付近にいる人物の行動や服装が具体的に一致している場合は、質問する理由が強まる可能性があります。

3. 客観的に合理的な疑いがあるか

警察官が個人的に怪しいと感じただけでは十分ではありません。

その場の具体的事情を踏まえ、社会通念上、犯罪との関係を疑う相当な理由が認められる必要があります。

ここで重要なのは、警察官の主観と法律上の判断基準は同じではないということです。

職務質問は誰に対しても行えるのか

警職法第2条は、犯罪を犯した、または犯そうとしていると疑われる人だけでなく、すでに発生した犯罪や、発生しようとしている犯罪について事情を知っていると認められる人も対象にしています。

つまり、職務質問を受けたからといって、本人が犯罪者として扱われているとは限りません。

事件の目撃者や参考情報を持っている可能性がある人に対しても、質問が行われることがあります。

夜間に職務質問される理由は?

夜間の職務質問では、時間帯そのものよりも、時間と場所、行動の組み合わせが問題になります。

例えば、深夜に人通りの少ない場所を歩いていることだけで、犯罪を疑う相当な理由が成立するわけではありません。

一方、近隣で事件が発生している、立入禁止区域に近づいている、周囲の状況と不自然な行動が重なっているといった事情があれば、警察官が確認する理由になり得ます。

夜間だから職質されやすいという単純な法則はありません。実際の調査結果についても、後述するように昼間と夕方から夜の割合には大きな差が見られません。

【実態調査】何度も職質される人は本当にいる?公的記録と調査データを検証

職務質問の実態を考えるうえで参考になるのが、東京弁護士会外国人の権利に関する委員会が2022年9月に公表した調査報告書です。

この調査は、外国にルーツを持つ日本在住者を対象として、2022年1月11日から2月28日まで実施されました。

有効回答数は2,094人です。

無作為抽出ではなく、関係者を通じた募集などによる調査であるため、日本に住むすべての人の職務質問経験を代表する統計ではありません。それでも、職質の受け止め方や繰り返し経験する人の存在を知る資料になります。

調査で明らかになった職務質問の経験
調査項目 結果 読み取れること
過去5年間の職質経験 62.9% 回答者の6割以上が経験
2~5回の職質経験 50.4% 複数回経験した人がいる
6~9回の職質経験 10.8% 繰り返し声をかけられる人も存在
10回以上の職質経験 11.5% 多数回経験した人もいる
警察官の質問や態度で不快に感じた経験 70.3% 対応への不満も見られる
昼から夕方の職質経験 36.9% 明るい時間帯にも発生
夕方から夜の職質経験 35.8% 夜間だけに偏っていない
職質時の服装がカジュアル 82.4% 特別な服装だけが対象ではない

出典:東京弁護士会「2021年度 外国にルーツをもつ人に対する職務質問(レイシャルプロファイリング)に関するアンケート調査」。職質経験者を中心とする回答であり、一般人口の発生率ではありません。

この数字で注目したいのは、職務質問を受けた人のうち、72.7%が複数回経験していたという点です。

つまり、職質は一度きりとは限らず、同じ人が繰り返し経験するケースも存在します。

ただし、調査対象者の属性や募集方法を考えると、この割合を日本全体の職質経験者にそのまま当てはめることはできません。

外見による判断とレイシャルプロファイリングの問題

同報告書では、外国にルーツを持つ回答者の職務質問経験についても調べています。

職務質問を受けた人の85.4%が、警察官は最初から自分を外国にルーツを持つ人だと認識していたと回答しました。

また、その理由について92.9%が身体的特徴を挙げています。

加えて、76.9%は、外国にルーツがあること以外に職務質問を受ける理由となる不審事由はなかったと認識していました。

この結果は、警察官の判断と、質問を受けた側の認識に食い違いが生じている可能性を示しています。

人種や国籍、肌の色などを理由に犯罪との関係を判断するレイシャルプロファイリングは、人権上の問題を伴います。

2024年の国会答弁で明らかになった警察庁の調査

2024年6月6日の参議院内閣委員会では、職務質問に関する警察庁の調査について政府参考人が説明しました。

答弁によると、警察庁は2021年中に都道府県公安委員会などへ寄せられた2,220,899件の苦情・相談などから、人種、国籍、容貌、服装などを理由とする職務質問に関係する案件を抽出しました。

そのうち都道府県警察から抽出された40件を精査し、不適切または不用意な言動があった職務質問が6件確認されたと説明しています。

該当する都道府県警察への個別指導と、全国警察への指導徹底も行われました。

一方、この答弁では、同様の調査はその後実施していないことも明らかにされています。

このため、2026年時点で職務質問に関する問題が完全に解消したと判断できる全国的な最新統計が公表されているわけではありません。

職務質問の必要性と、個人の尊厳や人権を守ること。この両方を考える必要があります。

【対処法】職務質問の断り方は?任意同行・所持品検査は拒否できる?

警察官から声をかけられたとき、最も気になるのが「断ってもよいのか」という問題です。

警察官職務執行法第2条第3項には、職務質問を受ける人について、刑事訴訟に関する法律に基づく場合を除き、身柄を拘束されたり、本人の意思に反して警察署などへ連行されたり、回答を強要されたりすることはないと定められています。

つまり、職務質問は原則として任意の手続きです。

職務質問そのものは拒否できる?

職務質問に対して、すべての質問に答えなければならないという一般的な義務はありません。

ただし、職務質問の適法性と、警察官の質問にどの程度協力するかは別の問題です。

例えば、警察官に質問されたときには、次のように対応できます。

- 何の確認をしているのか理由を尋ねる。
- 具体的に何を疑っているのか説明を求める。
- 回答したくない質問については、その意思を伝える。
- 任意の質問であれば、回答を控える意思を伝える。

無理に言い争う必要はありません。落ち着いて、自分の意思を明確に伝えることが大切です。

任意同行は拒否できるのか

警職法第2条第2項では、その場で質問することが本人に不利である場合や、交通の妨害になる場合などに、警察署、交番、駐在所への同行を求められると定めています。

しかし、これはあくまで同行を求める規定です。

第3項では、本人の意思に反して連行されることを禁止しています。

そのため、逮捕など別の法的根拠がない限り、任意同行を強制することはできません。

断る場合には、例えば次のように伝える方法があります。

任意同行ということであれば、今回は同行を控えたいです。必要な確認があれば、ここでお話しします。

なお、犯罪の捜査に関する被疑者の取調べについても、刑事訴訟法第198条により、逮捕・勾留されていない被疑者は出頭を拒むことができ、出頭後もいつでも退去できるとされています。

ただし、逮捕状に基づく逮捕や現行犯逮捕など、別の法的根拠がある場合は話が異なります。

所持品検査は拒否できるのか

所持品検査については、職務質問と少し違った法律上の問題があります。

警職法第2条には、一般の職務質問に伴う所持品検査を包括的に認める明文規定はありません。

ただし、最高裁判所は1978年6月20日の判決で、職務質問に付随する所持品検査について、本人の承諾を得ることを原則としながらも、捜索に至らず、強制にわたらない行為については、具体的な状況によって許される場合があるとの判断を示しました。

判断では、必要性や緊急性、個人の権利と公共の利益のバランスなどが考慮されます。

一方、1978年9月7日の最高裁判決では、警察官が本人の承諾なく上着の内ポケットに手を入れて所持品を取り出した行為について、許容される限度を超えていると判断されました。

したがって、所持品検査は何でも自由にできるわけではありません。

対応する際には、次のような伝え方が考えられます。

所持品の確認は任意でしょうか。現時点では、持ち物を提示することには同意していません。

警察官が所持品の確認を求めること自体と、本人の意思に反してバッグを開けたり、ポケットに手を入れたりする行為は区別する必要があります。

職務質問で使える対応フレーズ
状況 伝え方の例
声をかけられた 「何についての確認でしょうか?」
理由が分からない 「職務質問をする理由を教えてください」
質問に答えたくない 「その質問には回答を控えます」
任意同行を断りたい 「任意であれば同行は控えたいです」
所持品検査を断りたい 「所持品の提示には同意していません」
帰りたい 「任意の職務質問であれば、ここで失礼してよいでしょうか?」

重要なのは、拒否する権利があることと、警察官の職務を妨害してよいことは別だという点です。

相手の身体を押したり、警察官の手を振り払ったりするような行動は避け、必要であれば弁護士への相談につなげましょう。

【違法性を検証】何度も職質される原因と警察官の行き過ぎた対応を見分ける方法

何度も職務質問されると、「警察に目を付けられているのではないか」と不安になる人もいるでしょう。

しかし、複数回の職務質問を受けたという事実だけで、警察が特定の人物を犯罪者として登録していると判断することはできません。

何度も職質される主な理由

考えられる事情は次のとおりです。

1. 同じ場所や時間帯を通行している

警察官が重点的に警戒している地域や、事件が発生した場所を頻繁に通行している場合、複数回声をかけられる可能性があります。

2. 事件や事故の発生状況が重なっている

周辺で事件が発生した場合、警察官が目撃情報や現場周辺の状況を確認することがあります。

3. 自転車や車などの確認が行われている

自転車の防犯登録や車両に関する確認など、交通・防犯上の事情から声をかけられるケースもあります。

4. 行動が警察官の確認対象になっている

周囲を繰り返し確認するなどの行動が、現場の状況と重なって質問のきっかけになる場合があります。

5. 外見や属性を理由とした不適切な判断がある

外見や人種、国籍などに偏った見方が、職務質問のきっかけになっていないかという問題もあります。

ただし、これらは考えられる背景であり、特定の人が繰り返し職質される理由を一律に説明できるものではありません。

適法な職質と違法な職質の違い

職務質問の適法性は、警察官が質問したという事実だけでは判断できません。

質問の開始時点でどのような事情があったのか、その後どのような対応をしたのかを分けて考える必要があります。

判断する場面 適法性を判断するポイント
職務質問の開始 犯罪を疑う相当な理由が存在するか
質問の継続 必要性や質問の態様が合理的な範囲か
任意同行 本人の意思に反して強制していないか
所持品検査 承諾の有無、必要性、緊急性、検査の方法
長時間の留め置き 実質的な身柄拘束になっていないか
身体や持ち物への接触 具体的事情に照らして必要かつ相当な範囲か

1978年の最高裁判例では、任意同行や職務質問に伴う対応であっても、必要性を超えて事実上の拘束を続けることは許されないという考え方が示されています。

また、所持品検査についても、強制的な捜索と同じような方法を自由に認めたわけではありません。

職質が違法だと感じた場合の対応

不適切な対応を受けたと感じた場合は、次の点を記録しておくと、後から状況を説明しやすくなります。

- 職務質問を受けた日時と場所
- 警察官の所属や氏名、識別に役立つ情報
- 質問された内容と、その理由についての説明
- 任意同行や所持品検査を求められた経緯
- 拒否した際の警察官の対応
- 職務質問が終了するまでの時間

必要に応じて、都道府県警察の相談窓口や都道府県公安委員会への相談、弁護士への法律相談を検討できます。

違法性の有無は個別の事情によって異なります。職務質問を受けたというだけで違法になるわけではなく、反対に警察官が職務質問だと説明すれば、どのような対応も適法になるわけではありません。

【FAQ】職質されやすい人に関するよくある質問

Q1:職質されやすい顔や服装はありますか?

A1:法律上、職質されやすい顔や服装は定められていません。服装や持ち物が周囲の事情と組み合わさって判断材料になる場合はありますが、外見だけで犯罪を疑う相当な理由が成立するわけではありません。

Q2:夜中に歩いているだけで職務質問されますか?

A2:夜間に歩いていることだけで、職務質問が当然に適法になるわけではありません。時間帯に加えて、場所、周辺の事件情報、本人の行動などが総合的に判断されます。

Q3:職務質問は完全に拒否できますか?

A3:職務質問は原則として任意であり、回答を強制されることはありません。ただし、逮捕など別の法的根拠がある場合は異なります。落ち着いて任意の手続きなのか確認しましょう。

Q4:任意同行を断ると逮捕されますか?

A4:任意同行を断ったという理由だけで、直ちに逮捕できるわけではありません。逮捕には刑事訴訟法などに基づく別の要件が必要です。

Q5:所持品検査でポケットを探られるのは違法ですか?

A5:常に違法とは限りませんが、本人の承諾なくポケットの中に手を入れる行為は、原則として慎重な判断が必要です。必要性や緊急性など、具体的な事情によって適法性が判断されます。

Q6:何度も職質されると警察にマークされているのでしょうか?

A6:複数回の職務質問だけでは、警察に特別な対象として登録されているとは判断できません。同じ地域や時間帯を通行することや、周辺の事件状況など、複数の事情が関係している可能性があります。

職質されやすい人に、法律で定められた特定の顔つきや服装があるわけではありません。警察官職務執行法第2条が求めているのは、異常な挙動や周囲の事情を踏まえた、犯罪との関係についての合理的な疑いです。

夜間の外出、黒い服、パーカー、タトゥーなどを理由に、自分が職務質問の対象になりやすいと決めつける必要はありません。一方で、職務質問の実態調査からは、繰り返し質問を受ける人や、外見を理由にされたと感じる人が存在することも分かっています。

任意同行や所持品検査には法律上の制約があり、警察官の要求すべてに無条件で応じる必要はありません。質問の理由を確認し、任意であるかを確かめ、自分の意思を冷静に伝えることが大切です。

【プロの結論】 職務質問を正しく理解するための判断基準は、「警察官に声をかけられたか」ではなく、「その時点で具体的かつ合理的な理由があったか」「その後の対応が必要な範囲に収まっていたか」という2点です。警察の防犯活動と個人の自由・人権は、どちらか一方だけを優先するものではありません。法律上の権利を理解し、冷静に対応することが、自分を守るための現実的な方法です。

主な参考資料

- e-Gov法令検索「警察官職務執行法」
- e-Gov法令検索「刑事訴訟法」
- 最高裁判所第三小法廷・昭和53年6月20日判決
- 最高裁判所第一小法廷・昭和53年9月7日判決
- 東京弁護士会外国人の権利に関する委員会「2021年度 外国にルーツをもつ人に対する職務質問に関するアンケート調査」(2022年9月)
- 第213回国会参議院内閣委員会会議録(2024年6月6日)

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コンテンツディレクター 伊部 拓海
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映画・ドラマ担当。公開資料と一次報道を照合し、ネタバレの扱いには線引きルールを設けています。

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