野球中継で「ファンブル」「お手玉」「痛恨のエラー」という言葉を耳にすることがあります。内野手がゴロをグラブに当てながら捕り損ねたり、いったん捕球したボールを握り損ねたりするプレーがファンブルです。しかし、ファンブルしたからといって、必ずしもエラー(失策)が記録されるわけではありません。
判定の基準になるのが、公認野球規則9.12「失策」です。2026年度の野球規則改正も踏まえると、重要なのは単にボールを落としたかどうかではなく、普通の守備をすればアウトにできたか、ミスによって打者や走者を生かしたかという点です。捕球し直してアウトを取った場合や、走者が余分に進塁した場合など、具体的な場面を整理するとファンブルと失策の関係が理解できます。
【ファンブル野球とは?】意味・お手玉・落球との違いを解説

野球のファンブルとは、野手が打球や送球を捕球・処理する際に、ボールを弾いたり、グラブからこぼしたりして、確実に保持できないプレーを指します。
英語では「fumble」と表記され、野球では内野ゴロの捕球時や、捕球後の握り替えなどでボールを扱い損ねた場面によく使われます。
例えば、遊撃手の正面に転がったゴロをグラブで弾いてしまい、ボールが足元に転がるケースです。また、いったんグラブに収めたものの、送球しようとした瞬間にボールが手からこぼれるプレーも、一般にファンブルと表現されます。
テレビ中継やスポーツニュースでは「お手玉」「ポロリ」「捕球ミス」と表現されることもあります。特に、ボールを何度も弾いてしまう動作は、お手玉という言葉で説明されることが多いです。
ファンブルと落球はどう違う?ファンブルと落球は似ていますが、実況や野球記事では、プレーの状況によって使い分けられています。
- ファンブル:主にゴロなどの処理中にボールを弾く、こぼす、つかみ損ねるプレー。
- 落球:フライや送球などを捕球しようとして、ボールを落としてしまうプレー。
- お手玉:ボールをグラブや手で何度も弾ませ、うまく保持できない状態。
- 捕球ミス:ファンブルや落球を含む、ボールを正確に捕れない守備上のミスの総称。
ただし、これらは実況や一般的な野球用語としての使い分けであり、厳密に独立した公式記録の分類ではありません。
公認野球規則9.12でも、失策につながるミスプレーの例としてファンブルと落球が並べて示されています。つまり、名称よりも、そのプレーが試合結果にどのような影響を与えたかが重要です。
【ファンブルは必ずエラーになる?】公認野球規則9.12の判定基準
失策の判断は「普通の守備ならアウトにできたか」ファンブルがエラーになるかを判断するうえで、最も重要なのが公認野球規則9.12です。
同規則では、攻撃側チームを利する行為をした野手に失策を記録すると定めています。具体的には、次のようなミスプレーが対象です。
- 打者の打撃時間を延ばした場合。
- アウトになるはずだった打者走者や走者を生かした場合。
- 走者に1個以上の余分な進塁を許した場合。
例えば、正面の平凡なゴロを遊撃手がファンブルし、拾い直して一塁に投げたものの、打者走者がセーフになったとします。
記録員が、通常の守備をすれば一塁でアウトにできたと判断すれば、遊撃手に失策が記録されます。
一方、強い打球や難しいバウンドで、そもそも普通の守備ではアウトにできなかったと判断されれば、ファンブルがあっても安打になる可能性があります。
したがって、ファンブルの有無だけでなく、打球の強さ、守備位置、捕球の難易度、走者の状況などを総合的に見る必要があります。
ボールに触れなくてもエラーになる場合がある見落とされやすいのが、野手が実際にボールに触れたかどうかは、失策判定の絶対条件ではないという点です。
公認野球規則9.12の原注2では、平凡なゴロが野手の股間を抜けたり、平凡なフライが野手に触れずに地面に落ちたりした場合でも、普通の守備行為をすれば捕球できたと記録員が判断すれば失策を記録するとしています。
つまり、グラブに当たったかどうかだけで判断するのは誤りです。
頭脳的な判断ミスだけでは失策にならない同規則の原注3では、頭脳的な誤りや判断の誤りは、原則として失策にしないとしています。
例えば、野手がアウトにするのが難しい塁へ送球した結果、走者をアウトにできなかっただけなら、通常は失策になりません。
ただし、判断ミスが実際の悪送球などのミスプレーにつながり、攻撃側に利益を与えた場合は別です。野手が第3アウトと勘違いしてボールをスタンドに投げ入れ、走者の進塁を許した場合などは、実際のミスプレーに対して失策が記録されます。
このように、記録員が評価するのは選手の判断の良し悪しだけではなく、実際に生じたプレーとその結果です。
【ファンブル・エラー・落球の違い】公式記録とスコアの関係を一覧比較
ファンブルを理解するには、実況で使われる言葉と、スコアブックに記載される公式記録を分けて考えると分かりやすくなります。
公認野球規則9.02では、野手の公式記録として刺殺、補殺、失策などを定めています。失策は英語のErrorに対応し、スコアでは「E」と表記されます。
| 用語 | 意味・プレーの状態 | 公式記録上の扱い | 判断のポイント |
|---|---|---|---|
| ファンブル | ゴロなどを弾く、つかみ損ねる | 状況によって失策または失策なし | 打者や走者を生かしたか |
| お手玉 | ボールを何度も弾ませる | 状況によって失策または失策なし | 通常の守備でアウトにできたか |
| 落球 | フライや送球を捕り損ねる | 条件を満たせば失策 | 捕球できる打球だったか |
| 失策(E) | 守備のミスによって攻撃側に利益を与える | 公式記録に失策1を記録 | 公認野球規則9.12 |
| 野手選択(FC) | 野手が打者走者以外の走者をアウトにしようとするプレー | 野手選択として記録 | 守備の選択による結果か |
| 捕逸(PB) | 捕手が通常なら止められる投球を止められない | 捕逸として記録 | 捕手の守備行為が進塁の原因か |
| 暴投(WP) | 投手の投球が捕手に届くまでに大きく外れる | 暴投として記録 | 投球が通常の守備で処理できる範囲か |
重要なのは、ファンブル自体が独立した公式記録項目ではないことです。ファンブルというプレーが発生しても、失策の条件を満たさなければ、スコアにEは付きません。
また、捕逸と暴投は失策とは異なる記録です。公認野球規則9.12では、暴投や捕逸による進塁について、原則として投手や捕手に失策を記録しないと定めています。
この違いを理解すれば、スコアボードにEが表示された理由や、野球中継で「記録はエラー」と発表される意味も理解しやすくなります。
【ファンブル後の走者はどうなる?】内野ゴロとアウトを取れたケースを検証
ケース1:内野ゴロをファンブルして打者がセーフ最も典型的なのが、内野ゴロのファンブルです。
例えば、無死走者なしで三塁手の正面に平凡なゴロが転がり、三塁手がボールを弾いてしまったとします。拾い直して一塁へ送球したものの、打者走者がセーフになりました。
普通の守備をすればアウトにできたと記録員が判断した場合、三塁手に失策が記録されます。
このとき、打者は安打ではなく失策による出塁となり、通常の安打としては扱われません。
ケース2:ファンブル後、すぐに拾い直してアウトを取ったここがファンブルと失策を区別する要点です。
公認野球規則9.12(d)(4)には、野手がゴロをファンブルするか、飛球・送球を落とした後、ただちにボールを拾って、どの塁ででも走者を封殺した場合には、その野手に失策を記録しないという規定があります。
例えば、一塁走者がいる場面で遊撃手がゴロをファンブルしたものの、すぐに拾い直して二塁へ送球し、走者を封殺したケースです。
この場合、ファンブルというミスは発生していますが、規則が定める条件に該当するため、ファンブルしたことだけを理由に失策を記録するわけではありません。
ただし、この規定が明示しているのは封殺を成立させたケースです。「アウトを一つでも取れば、どんなファンブルも必ず失策にならない」と単純化するのは正確ではありません。
ケース3:ファンブルによって走者が余分に進塁した走者がいる場面では、ファンブルによって進塁を許したかどうかも重要です。
例えば、一塁走者がいる場面で二塁手が平凡なゴロをファンブルし、打者走者だけでなく一塁走者も二塁へ進んだとします。
本来の守備であればアウトにできた走者を生かしたり、ミスによって余分な進塁を許したりしたと記録員が判断すれば、失策の対象になります。
失策の判定では、打者走者だけでなく、各走者がどこまで進んだかも確認する必要があります。
ケース4:ファウルフライを落としてしまったファウルフライの落球も、通常のゴロのファンブルとは少し異なる扱いです。
公認野球規則9.12(a)(2)では、野手が普通の守備行為で捕球できたファウルフライを落とし、打者の打撃時間を延ばした場合、その野手に失策を記録すると定めています。
その後、打者が三振や凡打でアウトになったとしても、打撃時間を延ばしたという事実は変わりません。
ただし、記録員が普通の守備では捕球できなかったと判断した場合は、失策にはなりません。また、0アウトまたは1アウトで三塁走者の得点を防ぐ意図があったと判断される特別なケースにも例外があります。
ケース5:ファンブルと悪送球が連続して発生した捕球に失敗した後、拾い直して一塁へ投げたものの、送球も大きくそれるケースがあります。
この場合、最初のファンブルと、その後の悪送球がそれぞれ独立したミスプレーとして認められるかによって、記録の扱いが変わります。
2026年6月3日の阪神対西武戦では、阪神の小幡竜平選手が遊撃へのゴロをお手玉した後、一塁への送球もそれるプレーがあり、2失策が記録されました。1つの守備機会でも、異なるミスが重なれば複数の失策につながる実例です。
このように、ファンブル後の走者の進塁やアウトの成立は、単純にボールを落とした瞬間だけでは判断できません。プレー全体を追う必要があります。
【2026年最新】野球規則9.12の改正内容とプロ野球のファンブル事例
2026年度の野球規則改正で何が変わった?日本野球規則委員会は2025年11月20日、2026年度の野球規則改正を公表しました。
全日本野球協会が案内した改正項目は27項目に及び、内野手の守備位置制限、投手の投球動作、走者に関する規定など、複数の条文が見直されています。
失策に関係する9.12については、(f)(1)①の「打者」という表記を「打者走者」に改める項目が含まれています。これは用語の明確化に関する変更であり、ファンブルが失策になる基本条件を定めた9.12(a)(1)の判断枠組みを変更するものではありません。
そのため、2026年もファンブルと失策の関係を理解する基本は、普通の守備でアウトにできたか、攻撃側に余分な利益を与えたかという従来の基準です。
2026年7月12日:巨人・門脇誠選手のファンブル2026年7月12日のDeNA対巨人戦では、巨人の二塁手・門脇誠選手がファンブルによって失策を記録されました。
6回1死一塁、DeNAの宮崎敏郎選手が放ったゴロは二塁手の正面へ転がりました。併殺が期待される場面でしたが、門脇選手が打球をファンブル。遊撃手の浦田選手がカバーして一塁へ送球したものの、打者走者を含めてオールセーフとなりました。
このプレーでは、門脇選手に失策が記録されています。平凡なゴロを処理できず、アウトになる可能性のあった打者走者を生かしたことがポイントです。
ファンブルした野手と、その後にカバーに入った野手が異なる場合でも、最初のミスプレーの責任が誰にあるかを記録員が判断します。
2026年6月3日:阪神・小幡竜平選手の2失策もう一つの事例が、2026年6月3日の阪神対西武戦です。
7回2死二、三塁で、西武の長谷川信哉選手が遊撃方向へゴロを放ちました。阪神の小幡竜平選手は打球をお手玉し、さらに一塁への送球も大きくそれました。
この一連のプレーで2失策が記録され、二塁と三塁の走者が生還しました。
この事例から分かるのは、ファンブルだけでなく、捕球後の送球動作も失策の判断対象になることです。ボールを拾い直した後に正確な送球ができるかどうかも、内野守備では大きな意味を持ちます。
また、失策が重なった結果、投手の自責点にも影響する可能性があります。失策によってアウトを免れた走者の得点は、規則9.16に基づいて自責点から除外される場合があります。ただし、すべての失点が自動的に非自責点になるわけではありません。
【野球のファンブルを減らす守備練習】捕球ミスを防ぐ基本と実践方法
ファンブルを減らすには、単にグラブを強く握るだけでは不十分です。打球への入り方、捕球姿勢、グラブの角度、捕球後の握り替えまでを一連の動作として練習する必要があります。
1. 正面のゴロを確実に捕る基本練習最初は弱いゴロを正面に転がしてもらい、基本の捕球姿勢を身につけます。
- 股関節と膝を柔らかく使って腰を落とす。
- グラブの面を打球に向ける。
- ボールから目を離さず、捕球位置を確認する。
- ボールをグラブで包み込むように捕る。
- 捕球後に右手を添え、送球の準備をする。
最初から強い打球を処理する必要はありません。ゆっくりしたゴロで確実に捕れるようになってから、徐々に速度を上げる方法が効果的です。
2. お手玉を防ぐハンドリング練習捕球したボールをうまく保持できない選手には、ハンドリング練習が役立ちます。
2人1組になり、近い距離からゆるいゴロを転がしてもらいます。最初は正面、次に左右、最後に不規則な方向へ転がしてもらい、グラブの角度と手首の使い方を確認します。
特に意識したいのは、ボールを弾いたときに慌てて手を伸ばすのではなく、体の近くでボールを処理し直すことです。捕球位置が安定すれば、次の握り替えにも余裕が生まれます。
3. 捕球から送球までを連続して練習する実戦では、捕球できても送球が遅れたり、握り替えに時間がかかったりすればアウトを取れません。
そのため、ゴロを捕る、ボールを握り替える、送球方向へステップする、正確に投げるという一連の動きを反復することが大切です。
全日本野球協会の指導者講習会でも、守備の基本姿勢や捕球後の動作、送球までの連続性が取り上げられています。基本を安定させてから、併殺やランニングスローなど実戦的な動きへ進むのが合理的です。
守備練習では、捕球成功率だけでなく、捕球後にどれだけ安定して次のプレーへ移れるかも評価しましょう。
【ファンブル野球に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:野球のファンブルとは簡単にいうと何ですか?
A1:野手がゴロや送球などを捕球・処理する際に、ボールを弾いたり、つかみ損ねたりするプレーです。何度もボールを弾く場合は、お手玉とも呼ばれます。
Q2:ファンブルしたら必ずエラーになりますか?
A2:必ずしもエラーにはなりません。公認野球規則9.12に基づき、普通の守備をすればアウトにできた打者や走者を生かしたか、走者に余分な進塁を許したかなどを記録員が判断します。
Q3:ファンブルした後にアウトを取ればエラーになりませんか?
A3:規則9.12(d)(4)では、ファンブルしたゴロや落球したボールを直ちに拾い直し、いずれかの塁で走者を封殺した場合、失策を記録しないと定めています。ただし、あらゆるアウトの取り方に無条件で適用される規定ではありません。
Q4:ファンブルと落球の違いは何ですか?
A4:ファンブルは主にゴロなどの処理中にボールを弾くプレー、落球はフライや送球などを捕り損ねるプレーを指すことが一般的です。ただし、どちらも失策の原因になり得るミスプレーです。
Q5:ファンブルで走者が進塁した場合、誰にエラーが付きますか?
A5:原則として、ミスプレーによって攻撃側に利益を与えた野手が対象です。ファンブルした野手、悪送球した野手、正確な送球を捕り損ねた野手など、プレーの原因に応じて記録員が判断します。
Q6:2026年の野球規則改正でファンブルの判定は変わりましたか?
A6:2026年度改正では9.12(f)(1)①の表記整理が含まれていますが、ファンブルを失策と判断する基本条件を定めた9.12(a)(1)の枠組みは変更されていません。
野球のファンブルは、守備でボールを弾いたり、捕球や処理に失敗したりするプレーです。しかし、ファンブルが発生したからといって、必ず失策が記録されるわけではありません。
最も重要なのは、公認野球規則9.12が定める失策の基準です。普通の守備をすればアウトにできた打者や走者をミスによって生かした場合、あるいは余分な進塁を許した場合には、失策が記録される可能性があります。
一方、ファンブル後に直ちにボールを拾い直して封殺を成立させた場合など、規則上、失策を記録しないケースもあります。捕球の難易度や走者の動き、プレーの最終結果まで確認することが大切です。
【プロの結論】ファンブルと失策は「ミスの発生」と「記録上の結果」を分けて考える野球観戦でファンブルを見たときは、次の3点を確認すると失策の判定を理解しやすくなります。
- 第一に、普通の守備でアウトにできた打球だったか。難しい打球なら、ファンブルしても安打になる可能性があります。
- 第二に、ミスによって打者や走者が利益を得たか。アウトになるはずの選手が生きたり、走者が余分に進塁したりすれば失策の対象になります。
- 第三に、ファンブル後の処理でアウトを取れたか。特に規則9.12(d)(4)の封殺に関する例外を理解すると、ファンブルしてもEが付かない理由が分かります。
2026年も、ファンブルと失策の基本的な関係は公認野球規則9.12によって判断されます。ボールを落とした瞬間だけを見るのではなく、その後の守備と走者の動きまで追うことが、野球のスコアや公式記録を正しく理解する近道です。
ファンブルは一瞬のミスですが、その記録には野球の守備と記録規則の細かな考え方が反映されています。
主な根拠資料: 日本野球機構「公認野球規則9.00」、日本野球機構「2026年度 野球規則改正」、NPB公式記録員コラム、2026年のプロ野球試合報道。