京都の観光問題を考えるうえで、最初に押さえたいのは、観光客数と市民が感じる不便さは必ずしも比例しないという点だ。
京都市の2025年観光総合調査によると、年間観光客数は6,279万人。前年から約12%増加し、初めて6,000万人を突破した。内訳は日本人5,011万人、外国人1,268万人である。
ここで見逃せないのは、外国人観光客が全体の約2割にとどまることだ。京都の混雑を外国人旅行者だけの問題として扱うと、国内旅行者や日帰り客による交通需要、観光シーズンの集中といった要因を見落としてしまう。
また、京都市が2026年6月12日に公表した2025年の観光総合調査では、観光消費額も2兆474億円と過去最高を記録した。観光は地域経済を支える重要な産業であり、単純に旅行者を減らせば解決する問題ではない。
京都市の観光客数には、観光目的だけでなく、市外からのビジネス、買い物、イベント、観劇、スポーツ、友人・知人訪問なども含まれる。したがって、6,279万人をそのまま純粋な観光目的の旅行者数と解釈することにも注意が必要だ。
市民意識調査の79.9%が示す問題京都市が2025年9月24日から10月23日に実施した市民意識調査は、観光と生活の両立を考える重要な資料だ。
調査対象は京都市内在住の18歳以上の市民5,500人。有効回答数は2,745件で、回答率は49.9%だった。
調査では、観光による生活上の影響について、次の結果が示された。
| 市民が感じている観光課題 | 割合 |
|---|---|
| 一部の観光地や周辺の混雑 | 70.6% |
| バス・地下鉄などの混雑 | 63.8% |
| 道路の渋滞 | 55.9% |
| 観光客のマナー違反 | 56.3% |
| 上記4項目のうち1項目以上 | 79.9% |
出典:京都市「令和7年 京都観光に関する市民意識調査」
ここで重要なのは、79.9%という数字の意味である。
これは観光客に対して否定的な市民の割合でも、観光そのものに反対する市民の割合でもない。観光地の混雑、公共交通機関の混雑、道路渋滞、マナー違反という4項目のうち、少なくとも1項目に迷惑を感じていると回答した人の割合だ。
加えて、同じ調査では「京都市の発展に観光が重要な役割を果たしている」と答えた市民が70.1%、「京都市が観光に関して評価されることを誇りに感じる」と答えた市民が65.2%に達している。
つまり、観光の経済的・文化的な価値を認めながら、日常生活への負担も感じている市民が少なくない。
この両面を理解しなければ、京都のオーバーツーリズム問題の本質は見えてこない。
【宿泊統計を検証】2025年の京都観光はどれほど回復したのか?

観光客数と並んで注目したいのが、宿泊施設の稼働状況だ。
京都市観光協会(DMO KYOTO)が2026年3月30日に公表した「京都市観光協会データ年報(2025年)」には、宿泊需要の変化が詳しくまとめられている。
主要ホテルの客室稼働率は80.6%2025年の京都市内主要ホテルの客室稼働率は80.6%。2024年の77.8%から2.8ポイント上昇した。
延べ宿泊数は10,549,946泊で、前年比4.9%増となった。
内訳を見ると、さらに特徴的な変化がある。
- 日本人の延べ宿泊数:前年比10.0%減
- 外国人の延べ宿泊数:前年比14.6%増
- 外国人宿泊比率:66.4%
外国人宿泊比率66.4%は、2014年の統計開始以来の最高水準だった。
円安の影響などを背景に、海外からの宿泊需要が増加した一方、物価高などによって日本人の宿泊需要は3年連続で前年を下回った。
加えて、平均客室単価は21,286円で前年比5.8%増。客室稼働率と平均客室単価を掛け合わせた客室収益指数も17,156円となり、前年比9.6%増加している。
ホテルと旅館では稼働状況が異なる京都市内の宿泊施設すべてが同じように混雑しているわけではない。
2025年の主要旅館の客室稼働率は59.3%で、前年の61.6%を下回った。
| 指標 | 2025年の結果 | 前年比・前年差 |
|---|---|---|
| 主要ホテル客室稼働率 | 80.6% | +2.8ポイント |
| 主要旅館客室稼働率 | 59.3% | −2.3ポイント |
| ホテル平均客室単価 | 21,286円 | +5.8% |
| ホテル客室収益指数 | 17,156円 | +9.6% |
| ホテル外国人宿泊比率 | 66.4% | +5.6ポイント |
| ホテル延べ宿泊数 | 10,549,946泊 | +4.9% |
出典:京都市観光協会データ年報(2025年)。ホテルは年間で105~115施設、旅館は21~23施設を対象とした主要施設の調査。
この数字から読み取れるのは、宿泊需要の増加が一律に発生しているわけではなく、施設の種類や客層によって差があるということだ。
なお、80.6%は京都市内の全宿泊施設を対象にした稼働率ではない。主要ホテルを対象とする標本調査であり、旅館や簡易宿所、民泊などを含む市全体の宿泊状況とは区別する必要がある。
また、2025年の京都観光総合調査では宿泊者数などの推計方法が変更され、過去の数値も一部遡及修正された。過去の公表値と比較するときには、統計方法の違いも考慮したい。
観光客の増加は京都に利益をもたらしているのか観光消費額が2兆円を超えたことは、地域経済にとって大きな意味を持つ。
宿泊施設、飲食店、土産物店、文化施設、交通事業者など、京都の幅広い産業が観光需要に支えられている。
一方、観光需要の増加によってホテルの客室単価が上昇すれば、旅行者の宿泊費負担も大きくなる。加えて、観光客向けの需要が強い地域では、住民が利用する店舗や交通機関との競合も生まれやすい。
ここで問われるのは、観光客を何人呼び込んだかだけではない。
観光によって生まれた経済的な利益が、地域の生活環境や文化財の保全にも還元されているかという点だ。
【観光地別に検証】清水寺・嵐山・祇園で何が起きているのか?
京都のオーバーツーリズムは、市内全域に均等に広がっているわけではない。
特に問題が表面化しやすいのが、清水寺周辺、嵐山、祇園など、国内外の旅行者が集中する地域である。
1. 清水寺・東山エリア
清水寺、産寧坂、二年坂、八坂の塔など、人気スポットが徒歩圏内に集まる。狭い坂道やバス停周辺に人の流れが集中しやすい。
2. 嵐山エリア
竹林の小径、渡月橋、長辻通などに旅行者が集中。限られた歩行空間での滞留や、竹への接触・損傷などが地域の課題になっている。
3. 祇園エリア
花見小路や祇園町南側地区では、芸妓・舞妓へのつきまとい、無断撮影、私有地への立ち入りなどが問題になっている。
清水寺は京都を代表する観光地であり、東山エリアの観光客を集める中心的な存在だ。
清水寺を訪れた旅行者は、その周辺の産寧坂や二年坂、八坂の塔、祇園などを続けて巡ることが多い。
こうした観光ルートは旅行者にとって効率的だが、地域にとっては同じ道路や歩道に人が集中する原因にもなる。
特に問題となるのが、観光客が徒歩で移動する区間と、市バスの乗降場所が重なることだ。
2026年秋の京都市交通局の対策では、京都駅から清水寺・祇園方面へ向かうバスについて、利用の多い午前9時から11時台に3~4分間隔で運行する体制を取っている。
これは、単に観光客が多いというだけでなく、限られた道路と停留所に大きな輸送需要が集中していることを示している。
嵐山:竹林と渡月橋に集中する人の流れ嵐山では、渡月橋と竹林の小径が代表的な観光スポットとなっている。
問題は、観光客が特定の写真撮影スポットや散策ルートに集まりやすいことだ。
竹林の小径は、広い道路のように大量の歩行者を受け入れられる空間ではない。撮影のために立ち止まる人が増えれば、後続の歩行者の通行にも影響する。
また、竹を傷つける行為や、道路をふさいで撮影する行為も問題となっている。
京都市と京都市観光協会は、2026年秋の取り組みとして、竹林の小径入口にあたる長辻通にマナー啓発員を配置している。
加えて、11月21日から23日、28日、29日には、地下鉄北大路駅と金閣寺、龍安寺、嵐山を結ぶ109号系統「楽洛 金閣寺・嵐山ライン」を運行する予定だ。
1日9往復、60分間隔の運行で、嵐山へ向かう交通手段を分散させる狙いがある。
祇園:芸妓・舞妓への無断撮影や私有地侵入祇園の問題は、交通混雑だけではない。
京都市公式の京都観光Naviは2025年5月、祇園町南側地区などで、芸妓・舞妓へのつきまといや無断撮影、店舗前などの私有地への無断侵入が確認されていると注意喚起した。
また、小学校や保育園の子どもを許可なく撮影する行為について、住民から不安や恐怖を感じるとの声が出ていることも紹介している。
祇園は観光客のためだけに存在する場所ではない。住民が暮らし、店舗が営業し、伝統文化が受け継がれている生活空間でもある。
写真撮影を目的に芸妓や舞妓を追いかけたり、私道に入ったりする行為は、観光の自由とは別の問題だ。
京都市観光協会は2026年度から、花見小路通でのマナー啓発員の配置を年間を通じて拡充している。
【市バス混雑問題】観光特急バスは本当に効果があったのか?
京都のオーバーツーリズムを語るうえで、市バスの混雑は避けて通れない。
京都市の市バスは、観光客だけでなく、通勤・通学、買い物、通院などに使われる市民の日常交通でもある。
そのため、観光客が集中する時間帯に市民の利用と観光利用が重なると、バスに乗れない、降車しにくい、停留所で長時間待つといった問題が起こる。
京都市が2025年12月に公表した市民意識調査でも、バスや地下鉄の混雑を迷惑に感じている市民は63.8%だった。
観光特急バスとは?2024年6月に全国初の仕組みで導入京都市は2024年6月1日、京都駅と東山エリアを結ぶ観光特急バスの運行を開始した。
これは、一般の市バスとは異なる運賃を設定し、観光客の利用を促す仕組みを活用したものだ。
主な系統は次の2種類。
- EX100号系統:京都駅前から五条坂、清水道、祇園、岡崎公園、銀閣寺方面へ向かう。
- EX101号系統:京都駅前と五条坂(清水寺)を結ぶ。
運賃は大人500円、小児250円。通常の均一区間運賃とは異なる設定で、観光客の利用を促進する。
ただし、市バスは公共交通機関であり、観光特急バスも特定の国籍や旅行者だけが利用できる専用車両ではない。市民も利用できる。
2025年に公表された効果検証の結果京都市交通局は2025年1月17日、観光特急バスの運行開始後の利用状況や混雑緩和効果を公表した。
注目したいのは、運行開始から2024年11月までの1日平均利用者数だ。
EX100号・EX101号を合わせて2,361人/日が利用していた。
特に2024年11月には1日平均2,952人となり、最も多い日には4,000人近くが利用した。
また、京都駅前D2乗り場では、観光特急バスの運行開始前、繁忙期のバス待ち時間がピーク時に20分を超えていた。
運行開始後の2024年10月20日には、繁忙期でも待ち時間は最長約15分に短縮された。
この結果から、観光特急バスが特定の乗り場における混雑緩和に寄与したことがうかがえる。
ただし、混雑問題が全面解決したわけではないここで重要なのは、効果を過大評価しないことだ。
京都市交通局の検証資料では、観光特急バスと並行する一般系統について、旅客数の変化だけでは観光特急バスによる効果を明確に確認できないと説明している。
また、清水道の停留所では、観光特急バスの運行開始後も、繁忙期に50人以上が乗車できずに待つ時間帯があった。
つまり、京都駅前の待ち時間が短縮しても、観光地側で新たな混雑が残る場合がある。
この結果は、交通対策の評価において、バスの利用者数だけを見るのでは不十分であることを示している。
実際の効果を判断するには、次のような指標が必要になる。
- 一般路線バスの乗車待ち時間
- 観光地側の停留所に残る乗客数
- 観光特急バスの利用率
- 道路渋滞による遅延時間
- 市民の通勤・通学時間帯の乗車環境
観光特急バスは有効な対策の一つだが、単独で京都の交通問題を解決できるものではない。
2026年秋の市バス混雑対策はどう変わった?2026年10月23日に京都市交通局が公表した秋の対策では、観光特急バスの利用促進に加え、複数の交通手段を組み合わせた輸送力の確保が進められている。
2026年秋の主な交通対策
東山方面のバス
3~4分
午前9時~11時台の運行間隔
106号系統・楽洛 東山ライン
京都駅前から五条坂、清水寺、祇園、三条京阪前を結ぶ。通常日は1日22便、重点期間は24便。
109号系統・楽洛 金閣寺・嵐山ライン
11月21日~23日、28日、29日に運行。北大路駅から金閣寺、龍安寺、嵐山を結ぶ。
地下鉄烏丸線
10時頃から19時頃まで、通常約7分30秒間隔のところを約5~6分30秒間隔に増発する。
加えて、京都市は「ポケロケplus+」を活用して、観光客を比較的空いているバスへ誘導する案内活動も実施している。
2026年11月1日には観光特急バスの全便を対象とした旅客流動調査も行われた。
11月21日から23日、28日、29日には、EX100号系統の京都駅から五条坂までの経路を変更し、交差点の左折による遅延を減らす取り組みも予定されている。
単純な増便から、利用者の流れを調整する対策へと重点が移っている点が2026年の特徴だ。
【2026年の対策】京都観光快適度マップと観光分散化は進んでいる?
交通機関の増便だけでは、観光地そのものに集中する人の流れは解消できない。
そのため京都市は、旅行者の訪問先や訪問時間を分散させる施策にも取り組んでいる。
京都観光快適度マップで混雑を事前に確認京都市公式の「京都観光快適度マップ」は、観光客が混雑を避けるために活用できる情報サービスだ。
主な機能は次のとおり。
1. 人気観光地周辺の時間帯別混雑予測
2. 一部スポットのライブカメラ映像
3. 比較的空いている観光スポットの紹介
4. エリア別の観光快適度表示
5. おすすめスポットやモデルコースの案内
観光快適度は、人の多さを5段階で示している。
対象エリアには、祇園・清水、嵯峨・嵐山、哲学の道・岡崎、伏見、京都駅周辺などが含まれる。
特に便利なのは、同じ観光地でも時間帯によって混雑状況が変わることを確認できる点だ。
例えば、清水寺周辺が混雑している場合、訪問時間を変更したり、別のエリアを先に巡ったりする判断材料になる。
ただし、混雑予測は天候やイベントなどで変化する。リアルタイムの状況と完全に一致するものではないため、旅行当日の確認も欠かせない。
観光分散化の具体策は?京都市は、清水寺や嵐山などの人気エリアだけに旅行者が集中しないよう、市内の別の地域にも観光客を誘導している。
代表的なのが「とっておきの京都」と呼ばれるエリアへの誘客だ。
- 大原:三千院などの寺院と自然を楽しめる。
- 高雄:神護寺など、山間部の歴史・自然資源がある。
- 山科:歴史的な寺社や自然を巡れる。
- 伏見:酒蔵や歴史的な町並みが魅力。
- 西京:洛西地域の自然や文化を楽しめる。
観光分散化の狙いは、単に旅行者を別の場所へ移動させることではない。
地域ごとの文化や魅力を活用し、旅行者が一つの有名スポットだけでなく、京都の多様な地域を楽しめるようにすることだ。
一方で、観光客が増えれば、それぞれの地域でも交通、ゴミ、騒音などの問題が発生する可能性がある。誘客だけでなく、地域の受け入れ体制を整えることが前提となる。
2026年10月開始「KYOTO TOURISTSHIP」とは?2026年10月1日、京都市と京都市観光協会は、新たな観光マナー啓発の取り組み「KYOTO TOURISTSHIP」を開始した。
これは、旅行者が訪問先の暮らしや文化に配慮しながら、地域との交流を楽しむ姿勢を広める活動だ。
公式サイトには、開設時点で17項目の観光マナーが掲載されている。
主な内容は次のとおり。
- 芸妓・舞妓を呼び止めない
- 禁止されている場所で写真を撮らない
- 私有地に立ち入らない
- 民家の前で座り込まない
- 路上喫煙やゴミのポイ捨てをしない
- 道路に広がって歩かない
- 竹や桜などの植物を傷つけない
- 手ぶら観光を心がける
- 人混みを避ける
日本語、英語、中国語(簡体字・繁体字)に対応し、旅行前と旅行中の両方でマナーを周知する仕組みになっている。
加えて、観光マナーを学べるクイズや、賛同を表明できる仕組みも設けられた。
従来の注意看板だけに頼らず、旅行者自身が地域への配慮を理解することを目指している点が特徴だ。
2026年秋は地域ごとの対策も拡充KYOTO TOURISTSHIPと並行して、京都市は地域ごとの取り組みも強化している。
| 地域 | 2026年の主な取り組み | 狙い |
|---|---|---|
| 東山 | 主要交差点への交通誘導員配置 | 歩行者・車両の安全確保 |
| 祇園 | 花見小路のマナー啓発員を年間配置 | 無断撮影や迷惑行為の抑制 |
| 嵐山 | 竹林の小径入口付近への啓発員配置 | 歩行マナーと環境保全 |
| 伏見稲荷周辺 | 踏切付近の安全確保・多言語啓発 | 滞留と交通上の危険を軽減 |
祇園では2026年度から啓発員の配置計画が大幅に拡充され、嵐山でも地域と連携した活動が行われている。
また、東山の維新の道と二年坂の交差点では、2025年秋以降、マナー啓発員を通年で配置する取り組みが進められている。
こうした施策は、観光地の混雑を交通だけの問題として扱わず、地域の生活環境や文化の保全と一体で考えている点に意味がある。
【プロの結論】京都オーバーツーリズム対策の効果と残された課題
ここまでの統計や行政施策を整理すると、京都のオーバーツーリズムには、観光需要の増加だけでは説明できない構造的な問題がある。
重要なのは、観光客の数を減らすことだけを目標にするのではなく、観光客がどこに、いつ、どのように集中するのかを管理することだ。
対策は進んでいるが、効果の検証はこれから2026年の京都では、観光特急バスの運行、臨時増便、地下鉄の増発、観光快適度マップ、地域別のマナー啓発など、さまざまな施策が実施されている。
これらは、混雑緩和に向けた具体的な前進と評価できる。
一方、2025年の市民意識調査では、観光課題のいずれかに迷惑を感じている市民が79.9%だった。
ただし、同調査では1年前より観光地の混雑が改善したと感じる市民も31.0%、公共交通の混雑が改善したと感じる市民も32.7%いた。
つまり、対策による改善を感じている人がいる一方で、依然として不便を感じる人もいる。
この結果を踏まえると、対策が無意味だったとも、すでに成功したとも判断できない。
今後は、施策の実施回数や利用者数だけでなく、市民の生活環境が実際に改善したかどうかを継続的に測定する必要がある。
京都のオーバーツーリズムを解決するための5つの判断基準今後の政策や観光施策を評価する際には、次の5つの視点が重要になる。
1. 市民の生活交通を守れているか
観光特急バスを増やすだけでなく、通勤・通学・通院に使われる路線の利便性が維持されているかを確認する必要がある。
2. 観光客の時間的・地理的な分散が進んでいるか
清水寺や嵐山だけでなく、大原、山科、伏見などへの誘客が実際の人流の変化につながっているかが重要だ。
3. マナー啓発が実際の行動変化につながっているか
ポスターやウェブサイトの閲覧数だけでなく、私有地への侵入、無断撮影、ゴミのポイ捨てなどが減少しているかを検証したい。
4. 観光収益が地域に還元されているか
観光消費額が増加しても、住民の生活環境が悪化したままでは持続可能な観光とはいえない。宿泊税などを活用した交通・環境整備の成果も重要になる。
5. 観光事業者と地域住民が協力できているか
行政だけでなく、宿泊施設、旅行会社、交通事業者、商店街、寺社、住民が同じ目標を共有することが必要だ。
観光客を排除するのではなく、観光の質を変える京都の観光は、歴史的な町並み、寺社仏閣、伝統文化、食文化などによって成り立っている。
観光客の訪問は地域経済を支える一方、観光地が住民の日常生活の場であることを忘れてはならない。
観光客が増えるほど、交通や文化財の保全にかかる負担も増える。だからこそ、観光収益と地域の受け入れ能力を一体的に考える必要がある。
京都が目指すべきなのは、観光客数の最大化ではなく、旅行者の満足度と住民の生活の質を両立させる観光モデルだ。
2026年に始まったKYOTO TOURISTSHIPや観光分散化の取り組みが、単なるキャンペーンに終わらず、実際の人流や市民意識の改善につながるかが今後の焦点になる。
【京都オーバーツーリズム】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:京都のオーバーツーリズムは2026年も深刻なのですか?
2026年11月現在も、清水寺周辺、嵐山、祇園などの人気エリアや市バスの混雑は課題となっている。2025年の京都市民意識調査では、観光に伴う4種類の課題のうち少なくとも1つに迷惑を感じている市民が79.9%だった。ただし、改善を感じている市民もおり、地域や時間帯によって状況は異なる。
Q2:京都のオーバーツーリズムは外国人観光客が原因ですか?
外国人旅行者の増加は重要な要因の一つだが、それだけではない。2025年の京都市観光客数6,279万人のうち、日本人は5,011万人、外国人は1,268万人だった。日帰り旅行者や国内旅行者も多く、交通機関や観光地への集中が問題を大きくしている。
Q3:観光特急バスは普通の市バスと何が違いますか?
京都駅と清水寺・祇園・銀閣寺方面などの観光地を結び、停留所を絞って運行する観光利用向けのバスだ。運賃は大人500円、小児250円。市民も利用できる。一般路線の混雑緩和を目的として2024年6月に運行を開始した。
Q4:京都観光快適度マップは何ができるサービスですか?
京都市公式の観光情報サービスで、人気観光スポット周辺の時間帯別混雑予測や、一部スポットのライブカメラ映像を確認できる。比較的空いている観光スポットやモデルコースも紹介されており、旅行計画や当日の混雑回避に役立つ。
Q5:京都でオーバーツーリズムを避けるにはどうすればよいですか?
人気スポットへの訪問時間をずらす、京都観光快適度マップを確認する、地下鉄とバスを組み合わせる、観光客が集中しにくい地域を巡るといった方法がある。また、荷物を預けて手ぶらで移動し、私有地への立ち入りや無断撮影を避けることも大切だ。
2026年の京都オーバーツーリズム問題を整理すると、観光客数の増加は確かに大きな背景にある。しかし、根本的な原因は、それだけではない。
2025年の観光客数は6,279万人、主要ホテルの客室稼働率は80.6%。一方、京都市民意識調査では79.9%が観光に伴う何らかの生活上の問題を感じていた。
京都市は観光特急バス、臨時増便、地下鉄の輸送力強化、京都観光快適度マップ、KYOTO TOURISTSHIPなどの対策を進めている。
ただし、交通の混雑が緩和されても、観光地の歩行者集中やマナー問題が残ることはある。逆に、観光客を別の地域へ誘導すれば、その地域に新たな負担が生じる可能性もある。
今後の京都観光で問われるのは、観光客を増やすことと、地域の暮らしを守ることのどちらかを選ぶことではない。
旅する人も、住む人も、京都の魅力を享受できる仕組みをつくれるか。
2026年秋から本格化した交通・マナー対策が、2027年以降の混雑状況や市民意識にどのような変化をもたらすのか。京都の持続可能な観光を判断するうえで、引き続き注目すべきポイントとなる。
主な参考資料・出典
- 京都市「令和7年 京都観光に関する市民意識調査」(2025年12月24日公表)
- 京都市「令和7年(2025年)京都観光総合調査」(2026年6月12日公表)
- 公益社団法人京都市観光協会「京都市観光協会データ年報(2025年)」(2026年3月30日更新)
- 京都市交通局「観光特急バスの運行による効果の検証結果」(2025年1月17日公表)
- 京都市交通局「秋の観光シーズンにおける市バスの混雑対策の実施」(2026年10月23日公表)
- 京都市・京都市観光協会「KYOTO TOURISTSHIP」の開始(2026年10月1日公表)
- 京都市公式「京都観光快適度マップ」
- 国土交通省・観光庁「オーバーツーリズム対策・各地域における取組内容および効果」
※統計数値は各資料の調査対象・定義に基づく。観光客数、延べ宿泊数、ホテル客室稼働率はそれぞれ異なる指標であり、単純比較はできない。