富士山が噴火した場合、溶岩流はどこまで到達するのか。火山灰は神奈川県や首都圏にも降るのか。こうした疑問に答える基礎資料が「富士山ハザードマップ」だ。2021年3月に改定された地図では、従来より想定火口範囲や溶岩流の到達可能性が広がり、火砕流・火砕サージ、融雪型火山泥流、降灰後土石流なども詳しく検討されている。
2026年11月現在、富士山の火山活動は気象庁の噴火警戒レベル1(活火山であることに留意)となっている。一方、2025年の首都圏広域降灰対策ガイドライン公表や、2026年の富士山火山防災対策協議会による体制整備など、防災対策は新たな段階に進んでいる。ここでは、最新の公的資料を基に、ハザードマップの正しい見方、噴火による影響範囲、到達時間、自治体の避難計画、自宅周辺で確認すべきポイントを整理する。
【2026年最新】富士山ハザードマップとは?2021年改定で何が変わったのか

富士山ハザードマップとは、富士山が噴火した場合に発生する火山現象について、どの地域に、どの程度の影響が及ぶ可能性があるのかを地図上に示した防災資料である。
作成の中心となっているのは、山梨県・静岡県・神奈川県、周辺市町村、国の関係機関などで構成される富士山火山防災対策協議会だ。
2004年6月に最初の富士山ハザードマップが策定された後、新たな地質調査や噴火履歴の研究成果、地形データの高度化などを踏まえて改定作業が進められた。
そして、2021年3月26日、第11回富士山火山防災対策協議会で改定版が承認された。
2021年改定版で大きく変わった5つのポイント今回の改定で重要なのは、単に地図の色や範囲が変更されたことではない。過去の噴火履歴の見直しや、より細かな地形データの導入によって、災害シミュレーションそのものが更新された点にある。
主な変更点は次のとおりだ。
- 想定火口範囲の拡大
- 大規模噴火における溶岩流の想定噴出量の増加
- 火砕流の想定規模の見直し
- 融雪型火山泥流の到達時間・危険度区分の追加
- 溶岩流などの到達可能性範囲の拡大
特に注目されるのが、溶岩流の大規模噴火シナリオだ。
2004年版では約7億立方メートルだった大規模噴火の溶岩流想定噴出量が、改定版では約13億立方メートルに引き上げられた。約1.9倍に相当する。
火砕流についても、従来の約240万立方メートルから約1,000万立方メートルへ想定規模が見直された。
加えて、地形データは従来の50メートル・200メートルメッシュから20メートルメッシュへと精緻化された。これにより、谷や尾根などの細かな地形がシミュレーションに反映されやすくなった。
こうした変更が、溶岩流や火砕流の到達可能性範囲の拡大につながっている。
2026年11月現在の富士山の活動状況気象庁の2026年11月6日時点の公表情報では、富士山は噴火警戒レベル1で、直近1週間以内に新たな情報は発表されていない。
ただし、噴火警戒レベル1は「活火山であることに留意」という段階であり、将来の噴火が起こらないことを保証するものではない。
また、富士山では1707年の宝永噴火以降、噴火の記録がない。長期間噴火していないという事実だけで、今後の噴火リスクを判断することはできない。
2026年の防災情報を確認する際は、ハザードマップと気象庁の火山活動情報を別々の役割を持つ資料として見る必要がある。
- ハザードマップ:噴火した場合の影響範囲を想定する資料
- 気象庁の火山情報:現在の活動状況や警戒事項を確認する情報
- 自治体の火山防災マップ:住民が実際に取るべき避難行動を確認する資料
【図解で理解】富士山ハザードマップの見方とドリルマップの違い
富士山ハザードマップを初めて見る人が戸惑いやすいのが、複数の地図が存在することだ。
特に重要なのが「ドリルマップ」と「可能性マップ」の違いである。この2種類を混同すると、噴火時の危険性を実際以上に大きく捉えたり、反対に危険な地域を見落としたりする可能性がある。
1. ドリルマップは個別の噴火シナリオを示すドリルマップは、想定した火口の位置や噴火規模などの条件を設定し、溶岩流や火砕流がどの方向へ進むのかを数値シミュレーションした地図だ。
例えば、同じ富士山の噴火でも、北側に火口ができる場合と南側に火口ができる場合では、溶岩流が進む方向や影響する市町村が異なる。
ドリルマップを見ると、特定の条件で溶岩流がどの谷を通り、どの地域へ向かう可能性があるのかを具体的に把握できる。
小規模・中規模・大規模噴火のそれぞれについて複数の計算ケースが用意されているのも特徴だ。
2. 可能性マップは複数のシミュレーションを重ねた地図可能性マップは、複数のドリルマップを重ね合わせ、火山現象が到達する可能性のある範囲をまとめたものだ。
住民が自分の住む地域にどのような危険があるのかを確認する際に役立つ。
ただし、ここで絶対に理解しておきたい注意点がある。
可能性マップで色が塗られた範囲のすべてが、一度の噴火で溶岩流に覆われるわけではない。
火口の位置や噴火規模によって、実際に溶岩流が進む方向は変わる。可能性マップは、さまざまな条件を想定して危険が及び得る範囲を示しているのである。
この点は、静岡県が公開する住民向け説明資料でも明確に示されている。
3. 小規模・中規模・大規模噴火のドリルマップを比較2021年改定版では、溶岩流の噴出量について3つの代表的な規模を設定している。
| 噴火規模 | 想定溶岩流噴出量 | マップで確認するポイント |
|---|---|---|
| 小規模噴火 | 約2,000万m³ | 小規模噴火時の流下方向と到達範囲 |
| 中規模噴火 | 約2億m³ | 中規模噴火時の影響範囲と経路 |
| 大規模噴火 | 約13億m³ | 広範囲に及ぶ溶岩流の到達可能性 |
| 火砕流 | 約1,000万m³ | 高温の火山灰・岩石・ガスの流下範囲 |
| 融雪型火山泥流 | 個別の発生条件を設定 | 到達範囲・到達時間・流動深・危険度 |
※溶岩流の数値は各規模のシミュレーションに用いられた想定噴出量。火砕流と融雪型火山泥流は異なる現象のため、溶岩流の規模区分とは直接比較できない。
4. 溶岩流の到達時間はどう読む?溶岩流の可能性マップでは、到達時間ごとに範囲が色分けされている。
代表的な時間区分は次のとおりだ。
- 2時間
- 3時間
- 6時間
- 12時間
- 24時間
- 7日間
- 最終到達範囲(最大約57日間)
ここで注意したいのは、到達時間が実際の噴火発生時刻を予測するものではないという点だ。
想定された火口から溶岩が流れ始めた場合、どの程度の時間で特定の地点に達する可能性があるのかを示している。
また、富士山火山避難基本計画では、避難対象エリアを溶岩流の到達時間などに基づいて区分している。
- 第2次避難対象エリア:火砕流・大きな噴石・溶岩流の1時間以内の到達範囲など
- 第3次避難対象エリア:1~3時間
- 第4次避難対象エリア:3~24時間
- 第5次避難対象エリア:24時間~7日間
- 第6次避難対象エリア:7日間~約57日間
溶岩流は火砕流などに比べて流下速度が比較的遅く、段階的な避難が可能な場合もある。しかし、火口の位置や流下経路によって避難に使える時間は変わる。
「溶岩流は遅いから、到達してから逃げればよい」という考え方は危険だ。
【被害の種類別】富士山噴火の影響範囲はどこまで広がる?
富士山噴火の被害を考える際、溶岩流だけに注目するのは不十分だ。
火山災害には、火口周辺で発生する非常に危険な現象から、遠方の都市生活に長期間影響する現象まで、さまざまな種類がある。
溶岩流:山麓から離れた市街地にも到達する可能性溶岩流は、噴火によって火口から流れ出した高温の溶岩が地表を流下する現象だ。
富士山の場合、山頂だけでなく山腹にも火口ができる可能性が想定されている。
溶岩流は地形の影響を受けやすく、谷や河川沿いなどを通って流れる場合がある。そのため、富士山からの直線距離だけで危険性を判断することはできない。
2021年の改定では、溶岩流の到達可能性範囲が拡大し、山梨県・静岡県だけでなく神奈川県内の一部地域にも影響が及ぶ可能性が示された。
神奈川県では、相模原市、南足柄市、小田原市、山北町、開成町、松田町、大井町などが、新たに溶岩流の到達可能性範囲に含まれる地域として示されている。
これは、神奈川県全域が溶岩流に覆われるという意味ではない。地図に示された流下経路と地域ごとの条件を確認することが必要だ。
火砕流・火砕サージ:避難までの猶予が少ない危険な現象火砕流は、高温の火山灰や岩石、火山ガスなどが一体となり、高速で斜面を流れ下る現象だ。
火砕サージは、火砕流に伴う高温のガスや火山灰などが、比較的希薄な状態で周囲へ広がる現象を指す。
どちらも高温で破壊力が大きく、建物や森林などに深刻な被害を及ぼすおそれがある。
溶岩流と大きく異なるのは、避難に使える時間が極めて限られることだ。
そのため、火砕流や大きな噴石などの危険が想定される地域では、噴火開始後に状況を見ながら移動するのではなく、噴火警戒レベルや自治体の避難情報に応じた早期の避難が重視される。
2021年改定では火砕流の想定規模も見直され、北東方向の富士吉田市方面や南西方向の富士宮市方面などで、到達距離が長くなる傾向が示された。
融雪型火山泥流:雪の多い時期に注意すべき二次的な危険融雪型火山泥流は、火砕流などの高温の噴出物によって山頂付近の雪が融け、大量の水や土砂、岩石が混ざり合って斜面を流下する現象だ。
富士山の周辺では、雪の積もった時期に噴火が発生した場合、融雪型火山泥流への警戒が必要になる。
特に注意したいのは、山頂付近だけでなく、河川や谷筋に沿って下流へ被害が広がる可能性があることだ。
2021年改定版では、融雪型火山泥流について、従来の到達範囲だけでなく、次の情報が充実した。
- 危険度区分
- 到達時間
- 最大流動深
- 可能性マップ
つまり、自宅が富士山から離れているからといって、融雪型火山泥流の危険がないとは限らない。
居住地域が河川沿いや谷筋に位置する場合は、自治体が公表する火山防災マップで確認しておきたい。
降灰・小さな噴石:遠方の生活にも影響する富士山噴火で特に広範囲への影響が懸念されるのが降灰だ。
火山灰は風に運ばれるため、溶岩流や火砕流の到達範囲から離れた地域にも降る可能性がある。
影響は降灰量によって異なる。
- 数ミリ程度:道路交通や車両の走行に支障が出る可能性
- 10センチ以上:渓流に堆積した火山灰によって土石流が発生する可能性
- 30センチ以上:木造家屋が倒壊するおそれ
また、小さな噴石にも注意が必要だ。
小さな噴石は噴火によって空中に放出された岩石などが風に運ばれて落下するもので、改定版の影響想定範囲では直径1センチ以上のものが対象となっている。
降灰時は、目や呼吸器を守るための防塵マスクやゴーグルを用意し、屋外での活動をできるだけ避けることが基本となる。
降灰後土石流:噴火が収まっても危険が続く降灰後土石流は、火山灰が積もった地域で雨が降り、灰や土砂が水と一緒に流れ下る現象だ。
通常の土石流と同様、谷筋や河川沿いなどで発生しやすい。
注意すべきなのは、噴火直後だけでなく、その後の降雨によって繰り返し発生する可能性があることだ。
火山灰が堆積すると地表の水が浸透しにくくなり、雨水と一緒に土砂が流れ出しやすくなる。
そのため、噴火活動が落ち着いたという情報だけで、土砂災害の危険までなくなったと判断してはいけない。
富士山ハザードマップには、降灰後土石流の可能性マップも用意されている。火山灰の影響範囲だけでなく、土砂災害警戒区域や土石流危険渓流との関係も確認したい。
【自治体の対応を比較】富士山火山避難基本計画と2026年の防災対策
ハザードマップは、危険性のある範囲を示す資料であり、それだけで避難の具体的な行動がすべて決まるわけではない。
実際の避難には、富士山火山防災対策協議会が策定した「富士山火山避難基本計画」と、各自治体の地域防災計画や火山防災マップが関係する。
2023年3月に策定された富士山火山避難基本計画富士山火山避難基本計画は、2021年のハザードマップ改定を受け、2023年3月に策定された。
それ以前の富士山火山広域避難計画を見直し、噴火現象ごとの特徴や影響範囲に合わせて、避難対象エリアや避難方法を整理したものだ。
主な変更点は以下のとおり。
- 避難対象エリアを従来の5区分から6区分に変更
- 渋滞を抑えるための徒歩避難の導入
- 避難行動要支援者の早期避難
- 観光客や登山者への早期帰宅の呼びかけ
- 噴火前の自主的な分散避難
- 学校、保育園、幼稚園などの避難対策の追加
特に注目したいのが、一般住民だけでなく、観光客・登山者・通勤通学者なども避難計画の対象として明確に位置づけられた点だ。
富士山周辺は観光客が多く、噴火時には住民と来訪者が同じ道路を利用する可能性がある。全員が自家用車で一斉に移動すれば、避難経路の混雑につながる。
このため、計画では状況に応じた徒歩避難や、観光客への早期帰宅の呼びかけなどが盛り込まれている。
山梨県・静岡県・神奈川県の火山防災マップ3県では、共通の富士山ハザードマップを基礎に、それぞれの地域特性を踏まえた防災情報を提供している。
山梨県
山梨県では、想定火口範囲、溶岩流、火砕流、融雪型火山泥流、降灰、降灰後土石流などの個別マップを公開している。
小規模・中規模・大規模噴火のドリルマップも確認でき、富士山北側の地域に住む人にとって重要な資料となる。
静岡県
静岡県では、富士山ハザードマップの改定版に加え、富士山火山防災GIS、防災マップ、広域避難計画、噴火時避難ルートマップなどを案内している。
自宅周辺の危険性だけでなく、実際にどの方向へ避難するのかを確認することが重要だ。
神奈川県
神奈川県は富士山の所在地ではないものの、2021年の改定で県内の一部地域にも溶岩流の影響が及ぶ可能性が示された。
降灰については県内全域に影響する可能性があるとして、2023年1月に神奈川県版の富士山火山防災マップを作成している。
加えて、2026年3月には神奈川県富士山火山広域避難指針を策定・公表。2025年3月に内閣府が公表した首都圏広域降灰対策ガイドラインを踏まえ、降灰対策も盛り込んでいる。
2026年に進む富士山の防災体制の見直し2026年の重要な動きとして、富士山火山防災対策協議会の体制整備が挙げられる。
神奈川県が2026年5月27日に公表した第16回協議会の開催結果では、改正活火山法に基づく協議会への改組や、富士山火山広域避難計画の改正などが協議された。
加えて、静岡県の2026年7月17日更新資料によると、7月16日開催の第17回協議会では、次の事項が取り上げられた。
- 富士山火山防災対策協議会の降灰対策作業部会の設置
- 降灰対策検討委員会の設置
- 協議会規約の改定
つまり、2026年は単に既存のハザードマップを利用する段階ではなく、広域降灰や避難体制の具体化を進める段階でもある。
なお、こうした協議会の設置や計画見直しは、2021年版のハザードマップそのものが2026年に全面改定されたことを意味するものではない。基礎となる想定図と、それを利用した防災計画の更新は分けて捉える必要がある。
2025年公表の広域降灰対策ガイドラインも重要2026年の防災情報を考えるうえで見逃せないのが、内閣府が2025年3月28日に公表した「首都圏における広域降灰対策ガイドライン」だ。
このガイドラインでは、富士山の大規模噴火によって首都圏などの遠隔地域に火山灰が降るケースを想定し、住民生活、交通、ライフラインなどへの影響を整理している。
特徴的なのは、降灰が想定される地域の住民について、原則として可能な限り自宅などにとどまり、生活を継続する考え方を基本としていることだ。
ただし、建物の安全性や生活物資の不足などによっては避難が必要になる。
また、2026年3月25日には、内閣府と東京都が共同で広域降灰対策具体化協議会の第1回会合を開催した。
富士山噴火の影響は、火口周辺の避難だけでなく、遠方の都市機能をどう維持するかという課題にも広がっている。
【自宅周辺をチェック】富士山ハザードマップを使った具体的な防災対策
ハザードマップを見ても、自分の住む場所がどの程度危険なのか分からなければ、実際の備えにはつながらない。
確認する際は、次の順番で情報を整理するとよい。
STEP1:自宅の住所から自治体の火山防災マップを確認最初に確認するのは、自宅がある市町村の公式防災マップだ。
富士山ハザードマップの可能性マップだけでなく、自治体が住民向けに作成した火山防災マップを確認する。
住所や地図上の位置から、次の項目を調べておきたい。
- 溶岩流の影響想定範囲
- 火砕流・火砕サージの影響想定範囲
- 融雪型火山泥流の影響想定範囲
- 降灰の想定堆積量
- 小さな噴石の影響想定範囲
- 降灰後土石流の危険区域
特に、自宅が複数の災害現象の影響想定範囲に含まれているかどうかを確認することが大切だ。
STEP2:避難場所と避難経路を確認する自宅の危険性が分かったら、次は避難場所と避難経路を確認する。
避難先は、単純に自宅から近い場所を選べばよいわけではない。
溶岩流の流下方向や河川の位置、火砕流・火砕サージの影響範囲などによって、安全な方向は異なる。
また、道路が通行できなくなるケースも考慮し、可能であれば複数の経路を把握しておきたい。
家族で生活している場合は、勤務先や学校にいるときに噴火した場合の集合方法や連絡方法も決めておくとよい。
STEP3:火山灰への備えを整える降灰は広範囲に影響するため、富士山周辺から離れた地域でも備えが必要になる。
用意しておきたいものは以下のとおり。
火山灰対策の備蓄チェックリスト
{@body const items = ["飲料水・保存できる食料","防塵マスク","保護用ゴーグル","ヘルメット","懐中電灯・予備電池","携帯ラジオ・モバイルバッテリー","常用薬・救急用品","衛生用品・ウェットティッシュ","家族の連絡先と避難先のメモ","現金・身分証明書の控え"]}
{@body const [checked,setChecked] = DIL.useState()}
{checked.length} / {items.length} 項目を確認
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setChecked(old=>v?[...old,i]:old.filter(x=>x!==i))}>{item}
{/each}
火山灰が降っているときは、できるだけ屋内にとどまり、窓や換気口から灰が入らないようにする。外出が必要な場合には、目や呼吸器を保護する装備を使用する。
STEP4:噴火警戒レベルと自治体の避難情報を確認するハザードマップは、あらかじめ想定される危険範囲を示す資料であり、実際の噴火時には火口の位置や噴火の規模、風向きなどによって状況が変わる。
そのため、次の情報を継続的に確認する必要がある。
- 気象庁の噴火警報・予報
- 富士山の噴火警戒レベル
- 自治体の避難指示・避難情報
- 降灰予報
- 道路・鉄道などの交通情報
特に、火砕流や大きな噴石などは避難の猶予が少ない。自治体から避難情報が出た場合は、自己判断で先延ばしにせず、指示に従うことが基本となる。
【プロの結論】富士山ハザードマップで本当に見るべき3つの判断基準
富士山ハザードマップを防災に役立てるには、単に自宅が色の付いた区域に入っているかどうかを見るだけでは不十分だ。
重要なのは、危険の種類、到達時間、実際の避難行動を結び付けて理解することである。
判断基準1:危険区域に入っていないことと安全は同じではないハザードマップに色が付いていない地域でも、火山灰や交通障害などの影響を受ける可能性はある。
特に降灰は、風向きによって広範囲に広がるため、溶岩流の危険区域外だからといって防災対策が不要になるわけではない。
判断基準2:到達時間だけで避難のタイミングを決めない溶岩流の到達時間は、想定された条件で計算したシミュレーション上の時間だ。
実際の避難では、道路の混雑や交通規制、家族の移動、要配慮者への支援なども考慮しなければならない。
火砕流や火砕サージのように、避難の猶予が少ない現象もある。
そのため、避難開始の判断は到達時間だけでなく、噴火警戒レベルや自治体の避難計画と合わせて考える必要がある。
判断基準3:ハザードマップと避難マップを使い分けるそれぞれの資料には役割がある。
- ハザードマップ:どこにどんな危険があるのかを知る
- ハザード統合マップ:複数の火山現象の影響を全体的に把握する
- 自治体の火山防災マップ:自宅周辺の危険性と避難行動を確認する
- 富士山火山避難基本計画:広域的な避難の基本方針を理解する
- 気象庁の火山情報:現在の活動状況を把握する
特にハザード統合マップは、複数の災害現象を一度に確認できる便利な資料だが、個別の現象の詳細や具体的な避難ルートまで十分に理解できるわけではない。
全体像を統合マップで確認した後、必要な個別マップと自治体の避難情報を確認する。この順番が合理的だ。
【富士山ハザードマップの見方】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年現在、富士山ハザードマップの最新版は何年版ですか?
2026年11月時点で、山梨県や静岡県が公式に掲載している基礎資料は、2021年3月改定版です。2026年には避難計画や降灰対策の見直しが進んでいますが、それらとハザードマップ自体の全面改定は別のものです。
Q2:富士山が噴火すると、ハザードマップの色が付いた地域すべてが被災しますか?
いいえ。可能性マップは複数の噴火位置や規模のシミュレーションを重ねたものです。一度の噴火で、色が付いたすべての地域に溶岩流が到達するわけではありません。
Q3:富士山から離れた神奈川県や首都圏にも影響がありますか?
あります。神奈川県の一部地域では溶岩流の到達可能性が示されており、降灰はさらに広範囲に及ぶ可能性があります。首都圏では交通やライフラインへの影響も考慮した広域降灰対策が進められています。
Q4:溶岩流はどのくらいの時間で到達しますか?
想定火口や噴火規模、流下経路によって異なります。ハザードマップでは2時間、3時間、6時間、12時間、24時間、7日間などの到達時間区分が示され、最終到達範囲は最大約57日間の想定もあります。
Q5:火山灰が降ったら必ず避難しなければなりませんか?
必ずしもそうではありません。広域降灰対策では、建物の安全性や生活物資の状況を踏まえ、可能な限り屋内で生活を継続する考え方が基本です。ただし、建物の倒壊のおそれや生活の継続が困難な場合は避難が必要になります。自治体の指示に従ってください。
富士山ハザードマップは、単に噴火した場合の被害範囲を示す地図ではない。溶岩流、火砕流・火砕サージ、融雪型火山泥流、降灰、小さな噴石、降灰後土石流など、それぞれ異なる火山現象の特徴を理解し、適切な避難につなげるための基礎資料だ。
2021年3月の改定では、噴火履歴や地形データの見直しによって影響想定範囲が拡大した。さらに2023年3月には富士山火山避難基本計画が策定され、2025年には首都圏広域降灰対策ガイドラインが公表された。2026年も、富士山火山防災対策協議会を中心に降灰対策や広域避難体制の整備が進められている。
今すぐ取り組みたいのは、次の3点だ。
1. 自宅がどの火山現象の影響想定範囲にあるか調べる。
2. 自治体の火山防災マップで避難先と避難経路を確認する。
3. 火山灰への備蓄と家族の連絡・避難方法を決めておく。
富士山ハザードマップを正しく読む最大の要点は、「どこが危険か」だけでなく「どの災害が、どのような経路で、どのくらいの時間をかけて影響するのか」を理解することにある。
噴火が起きてから初めて地図を開くのでは遅い。2026年の公的な防災情報を確認しながら、日常生活の中で自宅周辺のリスクを把握し、いざというときに迷わず行動できる準備を進めておきたい。