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国土交通省の交信記録原文を解説|羽田事故の英語・日本語訳と2026年の調査状況

滑原 圭介 滑原 圭介 • 更新: • 公開: • 読了約 21 分
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2024年1月2日17時47分ごろ、羽田空港C滑走路(滑走路34R)で、日本航空JAL516便と海上保安庁所属の航空機JA722Aが衝突しました。この事故をめぐり、多くの人が探しているのが、国土交通省が公表した当時の管制交信記録です。特に注目されているのは、JAL516便への着陸許可と、海保機への「No.1, taxi to holding point C5」という指示の違いです。

実は、国土交通省の公開資料には、日本語の仮訳だけでなく、英語の交信記録原文も掲載されています。原文を確認できるのは、羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会の中間取りまとめ資料にある「参考資料2-1」です。2026年現在の運輸安全委員会による調査状況も踏まえ、交信の全文構成、時系列、C5の意味、管制官の指示と事故発生の関係を整理します。

【原文の公開先】国土交通省の交信記録はどこで読める?

国土交通省交信記録原文

国土交通省は、2024年1月3日、羽田空港で発生した航空機衝突事故について、管制官とJAL516便、海上保安庁機などとの交信記録を公表しました。

加えて、同省の「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会」が2024年6月24日に公表した中間取りまとめ資料には、事故発生時の交信記録が英語原文と日本語仮訳に分けて収録されています。

確認すべき資料は次の2つです。

  • 参考資料2-1:事故発生時の管制交信記録(原文)。英語での交信内容を確認できる。
  • 参考資料2-2:事故発生時の管制交信記録(仮訳)。国土交通省が日本語に訳した内容を確認できる。

この2つを比較することで、実際にどのような英語表現が使用され、それが日本語ではどう説明されているのかが分かります。日本語版だけでは気づきにくい航空管制特有の表現も確認できます。

なお、ここでいう原文は、無線交信を文字に起こした英語の記録です。無線音声そのものと同一ではありません。実際の音声や操縦室内の会話については、運輸安全委員会が回収したボイスレコーダーなどを用いて別途分析しています。

また、TBS NEWS DIGは2024年1月3日、国土交通省が公開した日本語訳を全文掲載しました。日本語で交信の流れを追いたい場合には、こちらも参考になります。

したがって、原文と日本語訳の両方を確認するなら、国土交通省の参考資料2-1・2-2を照合するのが基本です。

【英語原文と日本語訳】事故の核心となった管制交信の違い

今回の事故を理解するうえで最も重要なのが、JAL516便とJA722Aに対して管制官が出した指示の違いです。

最初に、JAL516便に対する交信を見てみましょう。

17:44:56 Tokyo TOWER:
JAL516 RUNWAY 34R cleared to land wind 310/8.

17:45:01 JAL516:
Cleared to land RUNWAY 34R JAL516.

日本語の仮訳では、滑走路34Rへの着陸に支障がないことと、風向・風速が伝えられた内容になっています。

重要なのは、英語原文の「cleared to land」です。これは着陸許可を意味する航空管制上の表現です。JAL516便はこの許可を復唱しています。

一方、海上保安庁機JA722Aへの指示は異なります。

17:45:14 Tokyo TOWER:

JA722A Tokyo TOWER good evening, No.1, taxi to holding point C5.

17:45:18 JA722A:

To holding point C5, JA722A No.1, Thank you.

この部分は、日本語の仮訳では次のような内容です。

管制官:JA722A、東京タワー、こんばんは。1番目。C5上の滑走路停止位置まで地上走行してください。

海保機:滑走路停止位置C5に向かいます。1番目。ありがとう。

ここで注目したいのは、「taxi to holding point C5」という表現です。

「taxi」は航空機の地上走行、「holding point」は滑走路手前の停止・待機位置を意味します。つまり、C5の停止位置まで地上走行するよう伝えており、滑走路への進入や離陸を許可する表現ではありません。

また、原文には「RUNWAY 34R, line up and wait」という滑走路に進入して待機する指示も記録されていません。

もう一つ、誤解されやすいのが「No.1」です。

これは離陸順位が1番目であるという情報であり、滑走路への進入許可や離陸許可そのものではありません。管制官はJA722Aを次の出発機として扱う予定だったものの、実際に滑走路へ入る許可を出したわけではないのです。

加えて、「Tokyo TOWER」は羽田空港の飛行場管制機関が使用する無線上の呼出符号です。東京の観光名所である東京タワーや、別の独立した管制施設を意味するものではありません。

このように、原文と仮訳を並べると、着陸許可、地上走行指示、離陸順位の情報がそれぞれ異なる役割を持っていることが分かります。

【時系列一覧】17時43分から17時47分までの管制交信記録

事故直前の交信は、2024年1月2日17時43分02秒から17時47分27秒までの記録に整理されています。

ただし、公開された管制交信記録だけでは、JA722Aが実際に滑走路へ進入した後の機内の状況までは分かりません。そこは運輸安全委員会のボイスレコーダー解析と照らし合わせる必要があります。

時刻(日本時間) 交信・出来事 関係する機体・意味
17:43:02 JAL516便がスポット18番にいることを通報。滑走路34Rへの進入継続指示を受ける。 JAL516便・到着機
17:43:12 JAL516便が34Rへの進入継続を復唱。 着陸進入を継続
17:44:56 滑走路34Rへの着陸許可が出される。 JAL516便
17:45:01 JAL516便が着陸許可を復唱。 JAL516便
17:45:11~14 JA722Aに「No.1, taxi to holding point C5」と指示。 海保機・出発順位1番
17:45:18~19 JA722AがC5の停止位置に向かうと復唱。 海保機
17:45:40 JAL179便にC1の停止位置までの走行を指示。離陸順位は3番。 別の出発機
17:45:56 JAL166便に34Rへの進入継続と減速を指示。到着順位は2番。 別の到着機
17:46:13 JA722AがC5の滑走路停止位置標識を通過。 運輸安全委員会の調査記録
17:46:47 JA722Aが滑走路34R上で停止。 海保機
17:47:23 管制官がJAL166便に最低進入速度までの減速を指示。 JAL166便
17:47:27 JAL516便とJA722Aが衝突。操縦室用音声記録装置に衝撃音が記録される。 事故発生

※17時45分11秒は国土交通省の公開交信記録におけるJA722Aの最初の通報時刻です。運輸安全委員会の詳細な記録では、管制官によるC5への走行指示は17時45分14秒、副操縦員による復唱は17時45分18秒と整理されています。

この時系列で特に重要なのは、JAL516便への着陸許可が先に出ていたことです。

その後、海保機はC5への地上走行指示を受けています。そして17時46分13秒に停止位置標識を通過し、17時46分47秒には滑走路34R上で停止していました。

JAL516便は着陸進入を続け、17時47分27秒に衝突しました。

つまり、海保機が滑走路上に停止していた時間帯と、JAL516便が着陸進入を継続していた時間帯が重なっていたことになります。運輸安全委員会の経過報告は、この一連の動きを管制交信記録、飛行記録装置、操縦室用音声記録装置などから検証しています。

【管制官の指示の真相】なぜ海保機は滑走路に進入したのか

交信記録だけを読むと、管制官が海保機に滑走路進入を許可していないことは明確です。それでは、なぜJA722Aは滑走路34Rに入ってしまったのでしょうか。

運輸安全委員会が2024年12月25日に公表した第1回経過報告では、事故発生に関与したと考えられる要因を大きく3つに整理しています。

1.海保機側で指示の認識に食い違いが生じた

運輸安全委員会の調査によると、JA722Aの機長は、管制官から滑走路への進入許可を得たと認識していたとされています。

機長は調査に対し、管制官から「Runway 34R, line up and wait, you are No.1」と言われたと記憶していたことも報告されています。

しかし、この言葉は公開された管制交信記録には存在しません。

実際に記録されていたのは「No.1, taxi to holding point C5」です。副操縦員は「To holding point C5」と正しく復唱していましたが、その後、機内では滑走路進入許可を得た後に行うBefore Takeoff Checklistが始まっています。

運輸安全委員会は、出発の遅れ、震災支援という任務、離陸順位が1番と伝えられたこと、着陸するJAL516便の存在を把握していなかったことなど、複数の可能性を分析対象に挙げました。

2.管制官が海保機の滑走路進入を認識していなかった

管制官側にも重要な問題がありました。

運輸安全委員会によると、タワー東の管制官は、JA722Aが誘導路C5へ曲がったことを目視で確認していました。しかし、その後は他の航空機の監視や管制官同士の調整などを行い、海保機が滑走路に進入して停止していたことを認識していなかったと推定されています。

加えて、滑走路占有監視支援機能による注意喚起も発動していました。

ところが、事故発生当時の同機能は視覚的な表示による注意喚起で、音声アラームは搭載されていませんでした。運輸安全委員会の調査では、JA722Aが停止位置標識を越えた時点から衝突後まで注意喚起が発動していたにもかかわらず、管制官がその表示を認識していなかったことが明らかになっています。

また、C滑走路の停止線灯は、制御装置の老朽化更新工事に伴い運用停止中でした。これらは事故の背景に関わる重要な事実ですが、個々の要素が事故にどの程度影響したかについては、最終的な原因分析と区別する必要があります。

3.JAL516便も海保機を衝突直前まで認識していなかった

JAL516便側についても、運輸安全委員会は、滑走路上に停止していた海保機を衝突直前まで認識していなかったと推定しています。

事故当時は日没後で月明かりもなく、海保機の後方から見える外部灯火は白色でした。また、滑走路の中心線灯や接地帯灯も白色で点灯していました。

運輸安全委員会は、夜間の視認性や操縦席のヘッドアップディスプレイ(HUD)の使用が外部監視に及ぼす影響なども調査対象にしています。

ここで重要なのは、事故を単純に「管制官のミス」あるいは「海保機の誤認」だけで説明できないという点です。管制指示の理解、操縦室内の確認、管制官の監視、警報システム、夜間の視認性が重なった事故として調査が進められています。

運輸安全委員会の航空事故調査は、個人の責任を決めることではなく、事故の原因を究明し、再発防止につなげることを目的としています。

【2026年最新】運輸安全委員会の事故調査と新たな判明事項

2026年現在、羽田空港航空機衝突事故の調査は、最初の交信記録が公表された段階から大きく進展しています。

運輸安全委員会は、2024年12月25日に第1回経過報告を公表した後、2025年12月25日に異例となる第2回経過報告を公表しました。

第2回経過報告では、事故の原因究明に向けて、次のような追加分析項目が示されています。

  • 海保機機長の疲労や労務管理の状況。
  • 事故前30日間に機長が事故機と同型機に乗務していなかったこと。
  • 海保機の副操縦員が管制指示を正しく復唱した一方、滑走路進入許可後に実施するチェックリストを開始したこと。
  • 海上保安庁羽田基地でステライル・コックピット・ルールが導入されていなかったこと。
  • 管制官による継続監視や滑走路占有監視支援機能の運用状況。
  • JAL516便のHUD使用と海保機の夜間視認性。

特に注目されたのは、2025年3月に中部国際空港で実施された夜間の視認性検証実験です。海保機と同型の航空機を滑走路に配置し、小型固定翼機やヘリコプターを使用して、進入経路からどのように見えるかを調べました。

また、2025年9月には羽田空港の管制塔からの航空機や灯火の見え方についても再確認が行われています。

2026年4月にはJAL機の拡声器の問題も判明

2026年4月17日には、事故後の非常脱出に関する新たな情報も明らかになりました。

運輸安全委員会の検証で、JAL516便に搭載されていた拡声器は、客室後方まで乗務員の避難指示を十分に伝えられない可能性があることが判明しました。

事故当時、機内放送システムが作動しない状況で、客室乗務員の一部は拡声器を使用していましたが、効果を感じられず使用をやめた乗務員もいました。

この結果を受け、国土交通省航空局は航空会社や航空機メーカーに対し、より高出力の拡声器の装備や代替の伝達手段、実機を用いた訓練などを求めました。

これは衝突の原因そのものとは別の問題ですが、事故発生後の被害軽減という重要な調査分野です。

2026年版の運輸安全委員会年報でも、さらなる事実確認や分析、原因関係者からの意見聴取、関係国への意見照会などを継続する必要性が示されています。最終報告書の公表時期については、確定した予定が示されていません。

【再発防止策】管制交信と滑走路安全はどう変わった?

事故を受け、国土交通省は管制官とパイロット双方のコミュニケーション改善だけでなく、技術面や制度面の対策も進めています。

ATCコミュニケーションハンドブックの改訂

2025年6月27日、国土交通省は「ATCコミュニケーションハンドブック」を改訂しました。

主な改訂内容は次のとおりです。

  • 滑走路進入に関する管制用語の説明を追加。
  • 「No.1」など離陸順位を伝える際の注意事項を追加。
  • 自家用機などの操縦者に対する管制交信上の注意点を追加。
  • 管制交信のヒューマンエラーに関する事例と対策を充実。

今回の事故で問題となったのは、離陸順位を示す情報と滑走路進入許可が異なる意味を持つにもかかわらず、受け手側の認識に食い違いが生じたことです。改訂版では、こうした誤解を防ぐための具体的な留意事項が盛り込まれました。

操縦士のCRM訓練を制度化

2025年6月6日には、航空法等の一部を改正する法律(令和7年法律第55号)が公布されました。

この改正では、管制交信に関するヒューマンエラーを防ぐため、操縦士に対するCRM(Crew Resource Management)に関係する技能発揮訓練の制度化が盛り込まれました。

2025年12月1日に関連規定が施行され、対象となる操縦士には所定の訓練修了が求められています。

滑走路の監視システムも強化

管制官の目視だけに依存しない安全対策として、滑走路占有監視支援機能の警報強化や、滑走路状態表示灯(RWSL)の導入も進められています。

RWSLは、滑走路の使用状況を灯火で示し、管制官の指示とは独立した形で航空機などに注意を促す仕組みです。

2026年版交通安全白書に掲載された2025年12月22日時点の進捗では、羽田C滑走路の一部におけるRWSLは2029年度末以降の供用開始が予定されています。

事故の教訓は、管制官とパイロットの注意力を高めるだけでは十分ではないということです。誤認や確認漏れが発生した場合でも、警報や設備によって事故を防ぐ多重の安全対策が求められています。

【よくある質問】国土交通省の交信記録原文に関するFAQ

Q1:国土交通省が公開した交信記録の英語原文はどこで読めますか?
A1:国土交通省の「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会」の中間取りまとめ資料にある参考資料2-1です。参考資料2-2には日本語の仮訳が掲載されています。

Q2:海上保安庁機JA722Aには滑走路への進入許可が出ていたのですか?
A2:公開された管制交信記録には、滑走路への進入許可や離陸許可は記録されていません。確認できるのは「No.1, taxi to holding point C5」というC5の滑走路停止位置までの地上走行指示です。

Q3:JAL516便への着陸許可は何時に出ましたか?
A3:2024年1月2日17時44分56秒です。管制官は「RUNWAY 34R cleared to land」と伝え、JAL516便は17時45分01秒に復唱しています。

Q4:C5とは何を意味する場所ですか?
A4:羽田空港C滑走路に接続する誘導路C5付近の滑走路停止位置を指します。航空機が滑走路に進入する前に停止して待機するための位置です。

Q5:2026年現在、事故の最終報告書は公表されていますか?
A5:第1回経過報告は2024年12月25日、第2回経過報告は2025年12月25日に公表されています。2026年版の運輸安全委員会年報でも調査継続が示されており、最終的な事故原因の確定には引き続き調査が必要です。

国土交通省が公開した羽田空港衝突事故の交信記録原文には、事故直前の重要なやり取りが残されています。

JAL516便には17時44分56秒に滑走路34Rへの着陸許可が出されました。一方、海上保安庁機JA722Aに対する指示は、17時45分14秒の「No.1, taxi to holding point C5」であり、滑走路への進入許可ではありませんでした。

その後、海保機はC5の停止位置を通過し、滑走路34R上で停止。着陸進入を続けていたJAL516便と17時47分27秒に衝突しました。

事故の背景には、管制指示の認識の違い、操縦室内の確認、管制官の監視体制、滑走路占有警報の仕組み、夜間の視認性など、複数の問題が関係していたと考えられています。

【プロの結論】

この事故の交信記録を正確に読むためには、次の3点を区別することが欠かせません。

  • 着陸許可:JAL516便に出された「cleared to land」。
  • 地上走行指示:JA722Aに出された「taxi to holding point C5」。
  • 離陸順位:「No.1」は順番を示す情報であり、滑走路進入許可ではない。

また、交信記録で確認できる事実と、運輸安全委員会が現在も分析している事故原因は分けて考える必要があります。特定の個人や組織だけに原因を求めるのではなく、航空管制、航空機の運航、空港設備がどのように連携すれば同じ事故を防げるのかを検証することが大切です。

2026年以降も、最終報告書や再発防止策の実施状況に注目が集まります。交信記録の英語原文、日本語仮訳、運輸安全委員会の経過報告を組み合わせて読むことが、羽田空港航空機衝突事故を正しく理解するための出発点になります。

主要な公的資料・報道資料

- 国土交通省「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会 中間取りまとめ」参考資料2-1・2-2。英語原文と日本語仮訳。
- 運輸安全委員会「羽田空港航空機衝突事故の調査について(経過報告)」2024年12月25日公表、2025年3月訂正。
- 運輸安全委員会「第2回経過報告」2025年12月25日公表。
- 内閣府「令和8年交通安全白書」。
- TBS NEWS DIG「国土交通省が当時の交信記録を公開」2024年1月3日。

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滑原 圭介
コンテンツディレクター 滑原 圭介
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旅行・観光を担当。現地の公式観光資料と営業情報を確認してから記事にします。

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