2026年現在、新型コロナウイルス感染症は5類感染症への移行を経て、社会生活の中で流行を繰り返す感染症となっています。しかし、高齢者にとって死亡リスクがなくなったわけではありません。厚生労働省の公表資料では、2025年の新型コロナウイルス感染症による死亡者数は約2万1,500人に達し、そのうち65歳以上が約98%、80歳以上が約81%を占めています。
一方、「高齢者の致死率は何%なのか」という疑問には、単一の数字で答えることができません。70代、80代、90代ではリスクが異なり、オミクロン株の流行時期、基礎疾患の有無、ワクチン接種歴などによっても結果は変わります。2025年公表の国内研究や2026年の入院統計、最新のワクチン有効性データをもとに、現在の実態を整理します。
【2026年最新】新型コロナ高齢者の死亡割合は約98%という現実

2026年の高齢者の新型コロナ死亡リスクを考えるうえで、まず注目したいのが厚生労働省の人口動態統計とワクチン施策関連資料です。
2025年の新型コロナ死亡者数は約2万1,500人厚生労働省が2026年に公表した人口動態統計に基づく資料では、新型コロナウイルス感染症による2025年の年間死亡者数は21,497人でした。
過去の年間死亡者数と比較すると、次のようになります。
- 2020年:3,466人
- 2021年:16,766人
- 2022年:47,638人
- 2023年:38,086人
- 2024年:35,865人
- 2025年:21,497人
2022年の約4万7,600人をピークに減少傾向が見られますが、2025年にも2万人を超える死亡が記録されています。感染症としての危険性が完全になくなったわけではありません。
なお、ここでいう21,497人は2025年の暦年データです。「2025年度の死亡者数」として紹介されることもありますが、2025年度(2025年4月から2026年3月)とは集計期間を区別する必要があります。21,497人は人口動態統計の2025年分の概数です。
死亡者の約98%が65歳以上、80歳以上は約81%特に注目すべきなのが死亡者の年齢構成です。
厚生労働省の新型コロナワクチン関連情報では、令和7年度として紹介されている死亡者約2万1,500人について、65歳以上が約98%、80歳以上が約81%を占めると説明されています。
この数字から読み取れるのは、新型コロナによる死亡負担が高齢者、とりわけ80歳以上に集中しているという事実です。
ただし、ここで注意したいのは、98%という数字は死亡者全体に占める65歳以上の割合であり、65歳以上の感染者が98%死亡するという意味ではないことです。
死亡者の年齢構成と、感染した人が死亡する確率は別の統計指標です。この2つを混同すると、高齢者の実際の危険性を正しく理解できなくなります。
【年齢別に徹底比較】70代・80代・90代の新型コロナ致死率
新型コロナの年齢別致死率を具体的に知るには、感染者を一定期間追跡した研究データを見る必要があります。
国内研究で判明したオミクロン株流行期の年齢別致命率国立保健医療科学院が関係する研究グループによる論文「日本における新型コロナウイルスオミクロン株を主とする流行第6波の致命率」では、2022年1月に新型コロナと診断された40歳以上の21,821人を対象に、30日以内の死亡状況が調査されました。
その研究で報告された年齢別の30日致命率は以下のとおりです。
| 年齢層 | 30日致命率 | データの読み方 |
|---|---|---|
| 40代 | 0.026% | 低い水準 |
| 50代 | 0.021% | 低い水準 |
| 60代 | 0.14% | 70代以降で上昇 |
| 70代 | 0.74% | 高齢者層で上昇が明確 |
| 80代 | 2.77% | 70代より大幅に高い |
| 90代以上 | 5.18% | 対象年齢層で最も高い |
この研究から分かるのは、70歳を超えたあたりから死亡リスクが上昇し、80代、90代と年齢が高くなるにつれて、その差がさらに大きくなることです。
例えば、70代の0.74%に対し、80代では2.77%です。80代の数値は70代の約3.7倍に相当します。
ただし、この数字は2022年1月のオミクロン株流行第6波を対象とした研究結果です。2026年現在の感染者にそのまま当てはめられる最新の致死率ではありません。
70歳以上の大規模研究では致命率1.59%もう一つ参考になるのが、2025年に『Japanese Journal of Infectious Diseases』に掲載された田中英夫氏らの研究です。
この研究では、日本の10都府県における70歳以上の感染者283,052人を対象として、2022年1月から2023年3月までのオミクロン株流行期を調査しました。
その結果、70歳以上の年齢調整済み致命率は全期間で1.59%でした。
流行時期別に見ると、最も低い時期は0.67%、最も高い時期は2.58%です。第6波、第7波、第8波に対応する3つの上昇局面も確認されています。
この研究が示しているのは、オミクロン株流行期であっても、流行の規模や時期によって高齢者の致命率が変動するということです。
先ほどの90代以上の5.18%と、70歳以上全体の1.59%は矛盾する数字ではありません。対象年齢、調査期間、年齢構成の調整方法が異なるためです。
デルタ株とオミクロン株では致命率も違った同じ国内研究では、オミクロン株が主流だった第6波と、デルタ株が主流だった第5波の致命率も比較されています。
40代から80代では、オミクロン株流行期の30日致命率がデルタ株流行期より有意に低く、年齢調整済みの致命率比は0.42でした。
これはオミクロン株流行期の致命率が、比較対象となったデルタ株流行期の約42%だったことを示しています。
ただし、変異株の性質だけでなく、ワクチン接種の普及、過去の感染による免疫、治療体制の改善なども影響します。変異株の違いだけを理由に死亡リスクの差を説明することはできません。
【2026年の入院状況】5類移行後の死亡統計から分かること
2026年の高齢者の感染状況を把握するうえでは、死亡者数だけでなく入院患者数も重要な指標になります。
2026年の高齢者入院患者数は80歳以上が最多厚生労働省が2026年11月6日に公表した第44週の発生状況資料では、2026年1月以降、11月1日までの基幹定点医療機関における新型コロナ入院患者の累計は15,951人でした。
年齢別の内訳は次のとおりです。
- 60~69歳:1,325人
- 70~79歳:3,711人
- 80歳以上:6,793人
80歳以上だけで約6,800人に達しており、60代や70代と比較しても入院患者数が多いことが分かります。
ただし、この数字は全国の感染者や入院患者を完全に数えたものではありません。約500カ所の基幹定点医療機関から届け出られた入院患者の集計です。全国の全入院患者数と同一視することはできません。
5類移行後は感染者数と死亡者数の比較が難しくなった2023年5月8日、新型コロナウイルス感染症は感染症法上の5類感染症に移行しました。
移行前は医療機関からの全数把握を基本とする報告体制でしたが、移行後は指定された定点医療機関からの週次報告を中心とする仕組みに変わっています。
そのため、2022年以前の感染者数と2026年の定点報告数を単純に比較することはできません。
加えて、2025年4月7日以降は急性呼吸器感染症サーベイランスの開始に伴って定点医療機関の設置基準も変更されており、厚生労働省も数値の解釈に注意を促しています。
一方、人口動態統計による死亡者数は別の仕組みで集計されています。死亡診断書などに基づき、WHOの原死因選択ルールに沿って死亡原因を整理するため、感染者の定点報告数とは性質が異なります。
つまり、5類移行後の新型コロナ死亡統計を読むときは、感染者数、入院患者数、死亡者数をそれぞれ別の統計として扱うことが必要です。
【高齢者の重症化リスク】年齢と基礎疾患が死亡率を左右する
高齢者の新型コロナ死亡リスクが高くなる背景には、年齢による身体機能の変化と、複数の基礎疾患が重なる問題があります。
65歳以上では入院後の死亡リスクも高い厚生労働省が公表した新型コロナ入院症例のレジストリ解析では、2022年1月から2023年10月までのオミクロン株流行期に登録された入院患者を対象として、死亡に関連する要因が分析されました。
解析対象となった19,879例では、19~49歳を基準とした死亡のオッズ比が、50~64歳で5.08、65歳以上で20.35となっています。
この結果は、入院患者の中では年齢が死亡転帰と強く関連していたことを示しています。
ただし、20.35という数値は入院患者を対象とした統計上のオッズ比であり、65歳以上の感染者の20.35%が死亡するという意味ではありません。
基礎疾患がある場合は注意が必要高齢者の重症化リスクを考えるとき、年齢だけでなく基礎疾患の有無も重要です。
特に注意したいのは、次のような病気や健康状態です。
- 心疾患や心血管疾患
- 慢性呼吸器疾患やCOPD
- 慢性腎臓病や透析治療
- 糖尿病
- 高血圧
- 悪性腫瘍
- 肥満
- 免疫機能が低下する病気や治療
これらの病気があると、感染による身体への負担が大きくなったり、もともとの病状が悪化したりする可能性があります。
また、高齢者では筋力や嚥下機能、栄養状態などの身体的な予備力も個人差があります。同じ年齢でも、日常生活を自立して送れる人と、介護を必要とする人では感染後の経過が異なる可能性があります。
80歳以上は特に早期の体調変化に注意80歳以上では、発熱や咳などの典型的な症状が目立たない場合もあります。食事や水分摂取が減る、普段より動けなくなる、意識や反応が鈍くなるといった変化も見逃せません。
呼吸困難、意識障害、急激な体調悪化などがあれば、速やかな医療機関への相談が必要です。重い症状がある場合は救急要請も検討してください。
高齢者の場合、感染そのものだけでなく、脱水や持病の悪化を含めた全身状態の変化を観察することが大切です。
【2026年最新】高齢者のコロナワクチンは死亡リスクを下げるのか
高齢者の新型コロナ死亡リスクを考えるうえで、ワクチンによる重症化予防効果も欠かせません。
2025/26シーズンの研究では入院予防効果を確認厚生労働省が2026年に公表したワクチン有効性の資料では、2025/26シーズンのオミクロン株LP.8.1対応ワクチンについて、65歳以上の入院予防効果が報告されています。
米国の医療データを利用した研究では、65歳以上の入院予防効果はモデルナ社製で59.3%、ファイザー社製で48.3%でした。
また、米国7州の医療機関データを分析した別の研究では、65歳以上における入院予防効果は53%と報告されています。
加えて、デンマークの全国規模の研究では、65歳以上のLP.8.1対応ファイザー社製ワクチンについて、新型コロナ関連死亡に対する予防効果70.1%、入院予防効果60.6%という結果が示されました。
これらは海外の研究結果であり、日本国内のすべての高齢者に同じ効果が保証されるわけではありません。また、観察研究による推定値であり、個人の死亡確率を直接示す数字でもありません。
国内でも高齢者の入院予防効果が報告されている日本国内の2024/25シーズンの研究では、60歳以上におけるJN.1対応ワクチンの入院予防効果が63.2%と報告されています。
厚生労働省は、2024/25シーズンと2025/26シーズンの研究結果を踏まえ、新型コロナワクチンには感染後の入院や死亡などの重症化を防ぐ効果が認められていると説明しています。
ワクチンは感染そのものを完全に防ぐものではありません。しかし、高齢者にとって特に重要な入院や死亡といった重い転帰を減らすための手段として位置づけられています。
2026年10月から高齢者向け定期接種を実施厚生労働省によると、2026年10月から自治体による新型コロナワクチンの定期接種が実施されています。
対象は原則として65歳以上の人と、一定の重い心臓・腎臓・呼吸器機能障害または免疫機能障害がある60~64歳の人です。
接種費用は原則有料ですが、自治体によって自己負担額や助成制度が異なります。
接種するかどうかを検討するときは、年齢、基礎疾患、過去の接種歴、前回接種からの期間、現在の健康状態を踏まえ、かかりつけ医や自治体の案内を確認することが大切です。
【数字の正しい見方】致死率と死亡率の違いを理解する
コロナ高齢者致死率を調べる際に、最も混乱しやすいのが「致死率」「死亡率」「死亡割合」という3つの言葉です。
致死率は感染した人のうち死亡した人の割合致死率(致命率)は、一定期間に感染した人のうち、その病気によって死亡した人の割合を示します。
計算式は次のとおりです。
致死率(%)=対象期間中の死亡者数 ÷ 対象期間中の感染者数 × 100
例えば、1万人が感染し、そのうち100人が死亡した場合、致死率は1%です。
死亡率は人口全体を分母にする一方、死亡率は一定期間における人口全体の死亡状況を示す指標です。
人口動態統計などでは、人口10万人当たりの年間死亡者数として表されることがあります。
致死率が感染者の重症度を考えるための指標であるのに対し、死亡率は社会全体にどれほどの死亡負担が生じているかを考えるための指標です。
死亡者の98%が高齢者という数字だけでは致死率は分からない例えば、65歳以上が死亡者全体の98%を占めていたとしても、それだけで65歳以上の感染者の致死率が98%だとは判断できません。
正確な致死率を計算するには、同じ対象期間、同じ年齢区分、同じ感染者の把握方法による分母と分子が必要です。
5類移行後は感染者の全数把握が行われていないため、人口動態統計の死亡者数を定点報告の患者数で割っても、正確な致死率にはなりません。
2026年のコロナ高齢者致死率の現在の実態を把握するには、死亡者数だけを見るのではなく、年齢別の研究、入院統計、ワクチン有効性、流行時期を組み合わせて判断する必要があります。
【コロナ高齢者致死率】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:新型コロナに感染した80歳以上の致死率は何%ですか? A1:国内の2022年1月のオミクロン株流行期の研究では、80代の30日致命率は2.77%、90代以上は5.18%でした。ただし、2026年現在の感染者にそのまま適用できる数字ではありません。
Q2:65歳以上の新型コロナ死亡割合は本当に98%ですか? A2:厚生労働省の資料では、死亡者全体に占める65歳以上の割合は約98%とされています。これは死亡者の年齢構成を示す数字であり、65歳以上の感染者の98%が死亡するという意味ではありません。
Q3:2025年の新型コロナ死亡者数は何人ですか? A3:厚生労働省の人口動態統計に基づく2025年の概数では21,497人です。2024年の35,865人から減少しています。
Q4:オミクロン株は高齢者にとって危険性が低いのですか? A4:デルタ株流行期と比較すると、オミクロン株流行期の致命率は低下したという国内研究があります。しかし、70歳以上や基礎疾患のある人では死亡リスクが残っており、感染後の重症化に注意が必要です。
Q5:高齢者がコロナワクチンを接種すると死亡を防げますか? A5:ワクチンには入院や死亡などの重症化を予防する効果が報告されています。ただし、死亡を完全に防ぐものではありません。接種の適否は年齢、持病、接種歴などを考慮して医師に相談してください。
2026年現在、新型コロナウイルス感染症による死亡リスクは、流行初期と比較して変化しています。しかし、高齢者、とりわけ80歳以上の人にとって、依然として注意すべき感染症です。
厚生労働省の資料では、2025年の死亡者数は21,497人で、死亡者の約98%が65歳以上、約81%が80歳以上とされています。また、国内のオミクロン株流行期の研究では、70代0.74%、80代2.77%、90代以上5.18%という年齢別致命率が報告されました。
ただし、これらの研究値は調査時期や対象者によって異なり、2026年の個人の死亡確率を示すものではありません。2026年の入院患者統計でも80歳以上の患者が多く、高齢者の疾病負担が大きい状況が確認できます。
【プロの結論】
コロナ高齢者致死率を正しく理解するために、押さえておきたい判断基準は3つあります。
- 年齢:70代、80代、90代ではリスクが異なる。特に80歳以上は慎重な健康管理が必要。
- 健康状態:心臓病、腎臓病、糖尿病、呼吸器疾患などの基礎疾患や身体機能の低下も考慮する。
- 予防状況:ワクチン接種歴、流行時期、医療機関への相談や受診のタイミングを含めて判断する。
「オミクロン株だから安心」「5類になったから危険性は低い」と一律に判断するのは適切ではありません。反対に、死亡割合の高さだけを見て、感染したら必ず命に関わると考える必要もありません。
大切なのは、統計上の数字を正しく理解し、本人の年齢や持病に応じた予防と早期対応を続けることです。高齢の家族がいる場合は、ワクチンの定期接種や体調変化への対応について、かかりつけ医と日頃から相談しておくことが、2026年以降も重要な備えになります。
主な根拠資料: 厚生労働省の2026年公表資料、人口動態統計、国立保健医療科学院の研究、2025年刊行の国内高齢者コホート研究。