「高齢者とは何歳からを指すのか?」という疑問に対する一般的な答えは、65歳以上です。日本の人口統計や社会保障制度では、65歳を一つの基準として高齢者を区分することが多く、65~74歳を「前期高齢者」、75歳以上を「後期高齢者」と呼びます。
ただし、2026年現在、高齢者に全国共通で適用される一律の定義があるわけではありません。医療、介護、雇用、運転免許など、それぞれの制度で対象年齢が異なります。内閣府の「令和8年版高齢社会白書」では、2025年10月1日時点の高齢化率を29.4%と公表。一方、2026年9月に総務省が公表した最新の敬老の日関連統計では29.6%となっています。数字の基準日を区別して理解することも大切です。
【高齢者とは何歳から?】一般的な定義は65歳以上でも一律ではない

日本では、一般的に65歳以上の人を高齢者と呼びます。これは人口統計や社会保障制度などで広く採用されている年齢区分です。
しかし、65歳になった瞬間に、すべての法律や行政サービスで同じ扱いになるわけではありません。高齢者という言葉には、統計上の分類、医療制度上の資格、社会通念上の呼称など、複数の意味が含まれています。
高齢者に全国共通の法律上の定義はある?実は、日本にはあらゆる制度に共通する「高齢者は何歳以上」という単一の定義はありません。
例えば、内閣府の高齢社会白書では、65歳以上を高齢者人口として集計しています。一方、後期高齢者医療制度では原則75歳以上が対象となり、運転免許制度では70歳以上から高齢者講習の対象になります。
つまり、65歳以上という数字は社会全体を把握するための代表的な基準ですが、個別の制度を利用するときには、それぞれの法律や規定を確認する必要があります。
2024年の高齢社会対策大綱が示した新しい考え方重要な転換点となったのが、2024年9月13日に閣議決定された「高齢社会対策大綱」です。
この大綱では、日本人の平均寿命が世界最高水準にあり、高齢者の体力的な若返りも指摘されていること、65歳以上の就業者が増え続け、働く意欲も高いことなどを背景に、65歳以上を一律に高齢者として捉えることは現実的ではないという考え方が示されました。
年齢だけで高齢者を判断するのではなく、本人の健康状態や意欲、能力、社会参加の状況などを踏まえる必要があるという考え方です。
この考え方は、2026年版高齢社会白書にも引き継がれています。
【前期高齢者・後期高齢者とは?】65歳からの年齢区分を整理
65歳以上の人をさらに細かく分類すると、前期高齢者と後期高齢者という2つの区分があります。
この区分は、特に高齢者医療制度を理解するうえで重要です。それぞれの対象年齢と意味を確認しましょう。
前期高齢者は65歳~74歳前期高齢者とは、65歳以上75歳未満の人を指します。
一般的には高齢者に分類されますが、心身の健康状態や生活能力には大きな個人差があります。仕事を続ける人、地域活動に参加する人、趣味や旅行を楽しむ人など、生活スタイルはさまざまです。
医療制度では、前期高齢者の年齢区分は65歳から74歳までとされ、医療保険者間の財政負担を調整する仕組みが設けられています。
後期高齢者は75歳以上後期高齢者とは、75歳以上の人を指します。
この区分が特に重要なのは、75歳になると原則として後期高齢者医療制度の被保険者になるためです。
それまで加入していた会社の健康保険や国民健康保険などから、後期高齢者医療制度へ移行します。75歳の誕生日当日から対象となるのが基本です。
なお、65歳以上75歳未満でも、一定の障害について後期高齢者医療広域連合から認定を受けた場合には、後期高齢者医療制度の対象になることがあります。
65歳・75歳・90歳の区分を比較一般的な年齢区分と、学会が提案した新しい区分を整理すると、次のようになります。
| 年齢 | 一般的な区分 | 学会が提案した区分 | 主な意味 |
|---|---|---|---|
| 65~74歳 | 前期高齢者 | 准高齢者 | 高齢期への準備段階という考え方 |
| 75~89歳 | 後期高齢者 | 高齢者 | 老年期における医療・生活支援を考える区分 |
| 90歳以上 | 後期高齢者 | 超高齢者 | 平均寿命の延伸を踏まえた区分 |
注意したいのは、学会の提案と現在の公的制度は別物だという点です。行政の人口統計や医療制度では、現在も65歳以上、65~74歳、75歳以上という区分が使われています。
【高齢者の年齢区分と制度の違い】医療・介護・雇用・運転免許を比較
高齢者という言葉が制度ごとに異なる年齢を基準にしているのは、それぞれの制度が解決しようとする課題が違うためです。
特に注意したいのが、医療制度、雇用制度、運転免許制度です。65歳、70歳、75歳という数字が登場しますが、それぞれの意味は同じではありません。
制度別の対象年齢と主な内容| 制度・法律 | 対象年齢 | 制度の内容 |
|---|---|---|
| 高齢者の一般的な区分 | 65歳以上 | 人口統計などで高齢者人口として集計 |
| 前期高齢者医療 | 65~74歳 | 医療保険者間の財政負担を調整 |
| 後期高齢者医療制度 | 原則75歳以上 | 独立した医療制度の被保険者となる |
| 介護保険制度 | 65歳以上 | 第1号被保険者。要介護・要支援認定を受ければ原因を問わずサービス利用の対象 |
| 高年齢者雇用安定法 | 65歳まで・70歳まで | 65歳までの雇用確保は義務、70歳までの就業機会確保は努力義務 |
| 道路交通法 | 70歳以上・75歳以上 | 70歳以上は免許更新時の高齢者講習、75歳以上は認知機能検査などが対象 |
「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づく医療制度では、65~74歳と75歳以上で仕組みが分かれています。
65~74歳の前期高齢者については、加入している医療保険制度そのものが一律に変わるわけではありません。医療保険者間で前期高齢者の加入割合の偏りを調整し、財政負担の不均衡を是正する仕組みが設けられています。
一方、75歳以上になると原則として後期高齢者医療制度に移行します。運営には都道府県単位の後期高齢者医療広域連合が関わります。
ただし、医療費の窓口負担割合は年齢だけで決まるものではありません。所得などの条件によって異なるため、75歳になれば全員が同じ負担割合になるという理解は正確ではありません。
介護保険制度:65歳以上は第1号被保険者介護保険制度では、65歳以上が第1号被保険者に分類されます。
65歳以上の場合、原因を問わず、要介護・要支援状態になって認定を受ければ、介護保険サービスを利用できます。
一方、40歳以上65歳未満の医療保険加入者は第2号被保険者です。この年代では、末期がんや関節リウマチなど、法律で定められた特定疾病が原因で要介護・要支援状態になった場合に利用対象となります。
雇用制度:65歳までの雇用確保は義務、70歳までは努力義務高年齢者雇用安定法では、企業に対して65歳までの雇用確保措置が義務付けられています。
企業は、次のいずれかの措置を実施しなければなりません。
- 定年年齢を65歳まで引き上げる
- 定年制度を廃止する
- 65歳までの継続雇用制度を導入する
加えて、70歳までの就業機会を確保する措置についても努力義務があります。定年引上げや継続雇用だけでなく、業務委託契約や社会貢献事業への参加機会を設ける方法も認められています。
ここで重要なのは、70歳定年がすべての企業に義務付けられているわけではないという点です。65歳までの雇用確保義務と70歳までの就業確保努力義務は、明確に区別する必要があります。
運転免許制度:高齢者講習は70歳から運転免許制度では、一般的な高齢者の区分とは異なり、70歳が一つの基準になっています。
道路交通法により、免許更新時の年齢が70歳以上の人は、原則として高齢者講習を受講しなければなりません。
75歳以上になると、さらに認知機能検査が必要になります。また、一定の違反歴がある75歳以上の人は、運転技能検査にも合格する必要があります。
これらは年齢だけで運転能力を決めつける制度ではなく、免許更新時に安全運転に必要な能力を確認するための仕組みです。
【2026年最新データ】高齢化率29.4%と日本の高齢者人口の実態
2026年の日本の高齢者人口を把握するうえで、内閣府の「令和8年版高齢社会白書」は重要な資料です。
同白書によると、2025年10月1日時点の総人口は1億2,322万人。65歳以上の人口は3,622万人で、総人口に占める割合である高齢化率は29.4%でした。
令和8年版高齢社会白書の人口データ年齢別の人口構成を見ると、75歳以上の人口が65~74歳の人口を上回っています。
- 総人口:1億2,322万人
- 65歳以上人口:3,622万人
- 高齢化率:29.4%
- 65~74歳人口:1,495万人
- 75歳以上人口:2,127万人
特に注目すべきなのは、75歳以上が総人口の17.3%を占めていることです。65~74歳の12.1%を大きく上回っており、日本の高齢者人口の構成が変化していることが分かります。
2026年9月の最新公表統計では高齢化率29.6%ここで、29.4%という数字について補足が必要です。
これは令和8年版高齢社会白書が採用した2025年10月1日時点の人口統計に基づく数値です。
その後、総務省統計局が2026年9月20日に公表した「統計からみた我が国の高齢者」では、65歳以上人口は3,624万人、高齢化率は29.6%となりました。前年に比べて2万人増加し、過去最高を更新しています。
したがって、2026年11月時点で数字を比較する場合は、次のように整理できます。
- 令和8年版高齢社会白書:29.4%(2025年10月1日時点)
- 総務省の2026年9月公表統計:29.6%(2026年の敬老の日関連統計)
両者は矛盾する数字ではありません。対象とする時点が異なるためです。統計を引用する際には、数値だけでなく基準日や公表時期も併記が必要です。
2070年には高齢化率38.7%と予測内閣府の令和8年版高齢社会白書では、将来推計についても示されています。
65歳以上人口は令和25年(2043年)に3,953万人でピークを迎え、その後は減少に転じると推計されています。しかし、総人口の減少が進むため、高齢化率は上昇を続け、令和52年(2070年)には38.7%に達する見込みです。
つまり、高齢者の人数が将来的に減少しても、社会全体に占める高齢者の割合は高まり続ける可能性があります。
これは、医療や介護だけでなく、雇用、年金、地域交通、住宅政策など、幅広い分野に関わる課題です。
【日本老年学会・日本老年医学会の提言】高齢者を75歳以上とする理由
高齢者の年齢区分を考えるうえで、見逃せないのが日本老年学会と日本老年医学会による2017年の提言です。
両学会は、従来の65歳以上という区分を見直し、75歳以上を高齢者とする新たな定義を提案しました。
2017年の提言で示された3つの区分この提言では、65歳以上の人を次の3段階に分ける考え方が示されています。
- 65~74歳:准高齢者(pre-old)
- 75~89歳:高齢者(old)
- 90歳以上:超高齢者(oldest-old、super-old)
提言の背景には、高齢者の身体機能や認知機能に関する研究があります。2017年の報告書では、10~20年前と比較して、加齢に伴う身体機能の変化が現れる時期が5~10年程度遅くなっているという若返り傾向が指摘されました。
特に65~74歳では、健康状態が比較的良好で、社会活動に参加できる人が多いことが検討材料になっています。
2024年の報告書でも75歳以上という考え方を再確認2017年の提言から約7年後の2024年6月、日本老年学会は「高齢者および高齢社会に関する検討ワーキンググループ報告書」をまとめました。
この報告書でも、75歳以上を高齢者とする意義が改めて確認されています。
ただし、学会が目指す方向は、単純に高齢者の定義を10歳引き上げることだけではありません。年齢にかかわらず、本人の希望や能力に応じて社会参加や活動を続けられる「エイジフリーな社会」の実現を提言しています。
学会の提案は法律上の定義変更ではないここで誤解しやすいのが、75歳以上を高齢者とする提案が正式な法律として採用されたわけではないという点です。
2017年と2024年の報告書は、老年学・老年医学の立場から示された提言です。国の人口統計や医療・介護制度における65歳以上という基準を、一斉に75歳以上へ変更するものではありません。
したがって、2026年現在も「一般的には65歳以上」「学会の提案では75歳以上」という2つの考え方を区別して理解する必要があります。
【年齢だけでは測れない】2026年の高齢者像と社会の変化
高齢者という言葉から、仕事を退職した人、介護を必要とする人、社会活動から離れた人を想像することがある可能性があります。しかし、実際の高齢者人口は、そうしたイメージだけでは捉えられません。
2026年の統計を見ると、65歳以上でも働き続ける人や、地域社会を支える役割を担う人が数多く存在します。
65歳以上の就業者は943万人で過去最多総務省統計局が2026年9月に公表した統計によると、65歳以上の就業者数は943万人に達しました。前年を上回る増加が続き、22年連続で増加しています。
また、就業者全体に占める65歳以上の割合は13.8%で、こちらも過去最高です。
令和8年版高齢社会白書に掲載された2025年の就業率を見ると、次のような違いがあります。
- 65~69歳:54.5%
- 70~74歳:36.2%
- 75歳以上:12.6%
65~69歳では半数以上が働いているという結果です。65歳を迎えたことだけを理由に、仕事を引退する時代ではなくなっていることが分かります。
高齢者の健康状態や生活環境には大きな個人差がある同じ70歳でも、日常生活を自立して送る人もいれば、病気や身体機能の低下によって支援を必要とする人もいます。
年齢だけでは、健康状態、生活能力、経済状況、社会参加の程度を正確に判断できません。
加えて、高齢者の一人暮らしも増加しています。令和8年版高齢社会白書では、65歳以上の一人暮らしの割合について、2020年には男性15.0%、女性22.1%だったものが、2050年には男性26.1%、女性29.3%になると推計されています。
こうした変化を考えると、高齢者政策には医療・介護だけでなく、住まい、買い物、移動手段、孤立防止、地域とのつながりなども欠かせません。
高齢者を判断するときに確認したい3つのポイント年齢区分を実生活で活用する際には、次の3点を意識すると制度上の誤解を防げます。
- 年齢の基準:65歳、70歳、75歳など、制度ごとに対象年齢を確認する。
- 制度の目的:医療保険、介護保険、雇用、運転免許では、それぞれ対象者を分ける理由が異なる。
- 本人の状態:年齢だけで健康状態や就労能力、介護の必要性を決めつけない。
この3点を押さえることで、「高齢者だからこうである」という固定観念から離れ、実際の制度や本人の状況に沿って判断できます。
【高齢者とは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:高齢者とは何歳からですか?
A1:一般的には65歳以上を指します。ただし、法律や行政制度によって対象年齢は異なります。日本老年学会・日本老年医学会は75歳以上を高齢者とする新たな区分を提案していますが、全国共通の法律上の定義が変更されたわけではありません。
Q2:前期高齢者と後期高齢者は何歳から何歳までですか?
A2:前期高齢者は65歳以上75歳未満、後期高齢者は75歳以上です。特に後期高齢者になる75歳の誕生日は、原則として後期高齢者医療制度へ移行するタイミングになります。
Q3:70歳は高齢者に含まれますか?
A3:はい。一般的な区分では65歳以上に該当するため、70歳も高齢者に含まれます。また、運転免許の更新時には70歳以上が高齢者講習の対象になります。
Q4:日本老年学会が提案した75歳以上という定義は正式に採用されていますか?
A4:いいえ。2017年に日本老年学会と日本老年医学会が提案し、2024年の日本老年学会の報告書でもその意義が確認されていますが、法律やすべての行政制度に適用された統一基準ではありません。
Q5:2026年の日本の高齢化率は29.4%ですか?
A5:令和8年版高齢社会白書では、2025年10月1日時点の高齢化率が29.4%です。一方、総務省が2026年9月20日に公表した最新の敬老の日関連統計では29.6%となっています。基準日と統計の公表時期が異なるため、両方の数字を区別する必要があります。
高齢者とは何歳からなのかという疑問に対する一般的な答えは、65歳以上です。65~74歳は前期高齢者、75歳以上は後期高齢者という区分が広く使われています。
しかし、2026年現在も高齢者に関する全国一律の定義はなく、医療、介護、雇用、運転免許では異なる年齢基準が設けられています。
令和8年版高齢社会白書が示した高齢化率29.4%、そして2026年9月公表の29.6%という数字は、日本社会における高齢化の進行を示す重要な指標です。一方で、65歳以上の就業者が943万人に達していることからも、高齢者が一律に支援を受ける側であるという見方は、実態に合わなくなっています。
日本老年学会・日本老年医学会による75歳以上への定義変更の提案や、2024年の高齢社会対策大綱が示したエイジフリーな社会という考え方も、こうした変化を背景としています。
【プロの結論】高齢者という言葉を正しく理解するためには、「何歳からか」という数字と、「どの制度で何を目的に区分しているのか」という背景を分けて考えることが大切です。
年齢は行政サービスや社会保障の対象を決めるための重要な基準ですが、一人ひとりの健康状態や能力、社会的な役割まで決めるものではありません。65歳、70歳、75歳という数字だけにとらわれず、本人の希望や能力を尊重する視点が、これからの高齢社会には求められています。
主な根拠資料: 内閣府「令和8年版高齢社会白書」「高齢社会対策大綱」、総務省統計局「統計トピックスNo.149」、日本老年学会・日本老年医学会の2017年提言および2024年報告書、厚生労働省の高齢者医療・雇用・介護保険関連資料、警察庁の高齢運転者対策資料。